大阪大空襲の夜の都市伝説。
それは本当か?
証言を集めることで、あの日の出来事を推測してゆきます。
大阪大空襲の夜に起こったこと
1945年3月の大阪大空襲の夜、炎から逃れ地下鉄のホームに逃げ込んだ人たちがいた。
当時、空襲にあっても地下へ逃げてはいけないとされていた。関東大震災の際、地下に逃れた人たちが、火災の熱によりたくさん亡くなった経験があったからだ。
しかし、ほかに逃げ場はない。
これからどうなるのか……と皆が不安になっているところへ、地下鉄がホームに入ってきた。
そして、人々を乗せ、空襲に合わなかった地域へと運んだのだ。
……という噂・都市伝説が大阪にはあったそうだ。
この噂・都市伝説は本当か!? ということろに迫ったのが坂 夏樹さんの『命の救援電車』だ。
まず、当時の資料は焼却処分されているようで、客観的資料はない。つまり真相は闇の中なのだ。
『命の救援電車』では、代わりに証言をたくさん集めていくことで、確からしさをあげてゆく。
実際に地下鉄に乗ったという証言を集めていくと、心斎橋駅に逃げ込み、梅田駅まで運ばれ助かったという人が多数派。(この日の空襲では、梅田は被害にあっていなかった)その区間を地下鉄が走ったのはどうやら本当らしい。
本書はその証言を積み上げて、当時の様子を推測してゆく過程が興味深く、読みごたえがあるので、ぜひ本書を手に取ってみてほしい。聞き書きなどの宿題をする生徒さんなんかにも役立つ本だと思う。
戦時中、人員が不足していて、子どもたちが電車を運転していたなど、当時のことを知れるのもいい。
命の救援電車 大阪大空襲の奇跡
- 坂 夏樹
- さくら舎
- 2021/1/8
目次
序章 大空襲の夜、地下鉄が走った
第1章 歴史に埋もれた「謎の救援電車」
第2章 あの日、何があったのか――証言が語る大空襲下の希望の光
第3章 命を運んだ電車は3本あった――見えてきた救援電車の全貌
第4章 戦時地下鉄、ベールの向こう側
第5章 戦争に翻弄された少年少女たち
あとがき
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