水野敬也『夢をかなえるゾウ』を読んだよ

水野敬也『夢をかなえるゾウ』書影 90 文学

関西弁を喋るゾウが突然やってきて……チャンスの訪れは突然

好きな小説の一つに『岸和田少年愚連隊 完結編』があります。10代のガキだった不良仲間がそれぞれ大人になってゆくのが気に食わない主人公・チュンバ。家庭を持ったり、働こうとしたり、一人前の大人のような振る舞いをするツレが許せず、苛立ちます。青春の終わりの、なんとも言えない喪失感や、やりきれなさが溢れています。
私は、そんな昭和時代の不良ではなかったけれども、“子供時代”を失った空虚や、やり場のない想いは、同じように持っていました。それを、素直な言葉で綴られてしまうと、もう劇物です。読んでいる私まで、“あの頃”の思いでいっぱいになってしまいます。

この「岸和田少年愚連隊シリーズ」で目立つのは、その言葉です。タイトルの通り、作者も大阪府にある岸和田市出身の方で、岸和田方面で使われている方言で書かれています。
私は幸いにも(?)関西人なので馴染みのある言葉なのですが、なぜだか、関西弁を文章にしたものは、独特の読みづらさがあります。
日本語には喋り言葉である「口語」と書き言葉の「文語」という、二つのタイプがあります。関西弁っぽく文章にするときは、口語の内容を文字に書き起こしてしまうので、読みにくさが起こるのではないのかなぁと思っています。

『夢をかなえるゾウ』はその内容が話題になりましたが、「関西弁」の妙に関心しました。ある男のもとに、ある日突然インドの神様・ガネーシャが現れます。ガネーシャは人間の体にゾウの頭が乗った神様で、富を呼ぶ神様として大切にされています。
そのガネーシャがパッとしないサラリーマンのもとへやってきて、お金を稼いで“成功”する方法を伝授してゆくのですが……どれも地味で在り来りなものばかり。戸惑いながら、疑いながら、ガネーシャの言うことを聞いてゆくうちに、少しずつ「自分を変える」とはどういうことなのか知ってゆきます。

そしてこのガネーシャ、なぜか関西弁を話すのです。著者は特に関西出身の方でもないのですが、なんとも上手い。変な関西弁でもない上に、読みやすい。ガネーシャの胡散臭さと同時に、世話焼きでお節介な感じとか、可愛らしく人情味あふれるキャラクターが強調されているように感じました。
そして、ちょっと理屈っぽい、説教臭い話を、くだけた言葉でダラダラと話しかけている雰囲気も、他の自己啓発本と違うポイントなのかもしれません。

しかし、内容はいたって真面目。ガネーシャ自身も「他の本にも書いてあることなんやけど……」と、奇をてらったものではなく、定番で手堅い“成功法”が伝授されます。巻末に「ガネーシャの名言集」なる大切な所を要約したまとめが掲載されていたり、読み物としても面白い上に、使いやすい内容でした。

だけど。こんなの読んでも、実際にやらなきゃ意味がありません。さっそくひとつ目の課題から取り組みます。

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夢をかなえるゾウ

  • 著者:水野敬也
  • 発行所:飛鳥新社
  • 2007年8月29日

著者紹介

水野 敬也(みずの・けいや)

1976年生まれ。慶応義塾大学経済学部卒。大学在学中に友人と新橋・新宿・渋谷の路上にて、1分100円で人をホメちぎる「ホメ殺し屋」を始める。ホメ殺し屋解散後、執筆業を開始。処女作『ウケる技術』(共著)がベストセラーに。他の著書『BAD LUCK』(インデックス・コミュニケーションズ)がある。執筆以外にも、「義務教育に恋愛を!」をモットーに老若男女に恋愛を教える「恋愛体育教師・水野愛也」として、雑誌『KING』『サイゾー』などのコラム連載、講演多数。水野愛也名義の著書に『LOVE理論』(大和書房)、講演DVDに『恋愛体育教師水野愛也のスパルタ恋愛塾[ソフト編・ディープ編]』(ポニーキャニオン)がある。また、ディレクター古屋雄作との映像企画レーベル rice では『温厚な上司の怒らせ方』(ビクターエンタテインメント)の企画構成・脚本を手がける。

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