『トコトンやさしい水道管の本』|水道の歴史!種類!管理!修繕!

こんにちは。楽しみは後に取っておく方の あさよるです。本書『水道管の本』も、「あとで読もう」とずっと積んでいた本でした。この「今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい~」のシリーズを以前読んで面白かったので、これも楽しみだったのです。

本書『水道管の本』は、水道管に関するあらゆることが収録された本です。水道管の歴史、水道管の原理、水道管の素材、水道管の設計や修理、特殊な水道管、水道管のトラブルなどなど。各節は見開き2ページにイラスト付きで分かりやすく掲載されています。

町に見えない川がある!

水道の歴史は古く、エジプト王朝や古代バビロニア王朝でも水道の遺構が見つかっているそうです。本格的な水道は古代ローマのアッピア水道。エルサレムにあるヒゼキア王のトンネルが世界最古の水道トンネルです。日本じゃ小田原早良上水が最古の水道設備として記録されています。現存する最古の水道は熊本県の豪泉水道です。太閤下水は現在も使われています。

水道管に使われる素材も多種多様で、作り方と特性によって使い分けられているみたい。時代と共に使われなくなる素材もある。素材を聞いただけで設置された頃や目的までわかるのかな?〈利き水道管〉したいw

水道管が町中張り巡らされているようすを想像すると「我々は川の上に棲んでいる」とも言えるのではないだろうか。町には目に見えない川が流れ、流れ続けているのだ。

管理し続ける仕事

ローマ水道もローマ帝国の滅亡により破壊され荒廃してしまいました。水道管は管理し続けなければなりません。現在使われている水道は、日々誰かが管理し続けているということです。本書でも管理、点検、修繕の様子が紹介されているんですが、なんだか途方もない話で唖然!

人が入れない水道管もありますし、有毒ガスが発生していたり、低酸素状態の水道管もあります。危険を伴う仕事の上、気の遠くなるような地道な作業ばかり。鏡を使って地上の光を取り込んだり、車に乗せたライトやカメラで水道管内を点検するマシンがカッコいい。また、超音波やX線を使って水道管内を点検したり、ハイテクとローテクが入り乱れている感じがいい。

他人の仕事にアーダコーダ言えない

うちのご近所も水道工事でしばらるドカドカと賑やかで大きな車も出入りしていたんですが、「おお!この水道管を掘っていたのか!」と思うと、煩わしさは吹っ飛んで「カッケー!」と興奮してしまいました。他人様の仕事にゴチャゴチャ言っちゃあいけないっすな。何か必要があってやってるんだろうし。

この「トコトンやさしい」シリーズはお気に入りで、あさよるネットでも『トコトンやさしい染料・顔料の本』を紹介しました。こちらも、人の知恵の集大成を見ているようで良い本でした。本書の著者、高堂彰二さんも本シリーズで他にも本を書かれているようなので読んでみたいです。

トコトンやさしい水道管の本

目次情報

第1章 水道管の歴史

1 水道管のはじまり「古代ローマのアッピア水道で使われた水道管」
2 今も使われている最古の水道管「江戸時代の轟泉水道で使われた瓦質管」
3 ヒューム管の歴史「遠心力を利用した鉄筋コンクリート管」
4 塩ビ管の歴史「戦後復旧に活躍した水道用硬質塩化ビニル管」
5 鋳鉄管の歴史「近代水道に貢献した鋳鉄による水道管」
6 鋼管の歴史「鋼管製造法の変遷」
7 銅管の歴史「給湯用と水道用で広く使用」
8 鉛管の歴史「ローマ時代にすでに本格普及していた」
9 陶管の歴史「窯の進化が支えた陶管と土管」
10 ポリエチレン管の歴史「き裂漏水事故、水泡はく離事故の教訓」
11 強プラ管の歴史「強化プラスチック複合管」

第2章 いろいろな水道管

12 ヒューム管「外圧管、内圧管の概要」
13 塩ビ管「VP管とVU管」
14 ダクタイル鋳鉄管「強度が強く継手の種類が多い」
15 鋼鉄「強度は強いが継手の溶接に時間がかかる」
16 ステンレス管「不動態皮膜により耐食性のある合金」
17 架橋ポリエチレン管「軽くやわらかいポリエチレンを架橋で強化」
18 陶管「現在は農業用途に主に使われる自然素材管」
19 銅管「規制改正で給水管として注目」
20 ポリエチレン管「非常時に備えた耐震管として使われる」
21 強プラ管「複合材料の特性を生かした強度」
22 異形管(管継手)「配管を目的のルートに計画するため必要
23 接合方式「管と管を接合する方法」
24 フランジ「フランジで締め付け、ガスケットで面圧する」
25 伸縮管「温度変化や地盤沈下・地震による伸縮吸収」

第3章 水道管調査と更生、修繕

26 管内調査作業の安全対策「酸素欠乏症等防止規則の遵守」
27 目視調査「目視によって管の痛み具合等を調査」
28 テレビカメラ調査「流量が多い場合やガス等で人が入れない時の調査」
29 不透明水調査「下水道に流入する侵入水の調査」
30 漏水調査(その1)「音による給水管の水漏れの発見」
31 漏水調査(その2)「ガス、空気圧、水圧、レーダ等を使う」
32 検査ピグ「長距離配管をくまなく検査」
33 衝撃弾性波による調査「振動計測による非破壊検査」
34 残存肉厚の調査「管内厚および付着物の検査」

第4章 水道管の設計

35 水道管設計の基礎知識「水頭と水圧」
36 SI単位系と工学単位系「力学で使う単位」
37 流速と流量「管の大きさと流速で流量を決める基本式」
38 流れの種類「層流、乱流とレイノルズ数」
39 連続の式「連続の式は管路設計を行ううえで大変重要な式」
40 ベルヌーイの定理「全体のエネルギーは一定」
41 損失水頭①「摩擦、流入による損失」
42 損失水頭②「曲がり、屈折、断面による損失」
43 平均流速公式「実用上よく用いられる代表的な公式」
44 単線管水路「単性管水路の流速。流量の求め方」
45 直管換算長「損失水頭に相当する直管の長さ」
46 円形菅の水理特性曲線「水理特性曲線の活用法」
47 管きょの液状化対策「埋戻し土や杭、壁などによる対策」
48 動水勾配線の追跡「動水勾配線の求め方」
49 伏せ戻し「管きょ通貨の最後の手段」
50 配管の口径「配管口径の呼び方」

第5章 特殊な水道管の工法

51 水道管「独立水道橋の構造形式」
52 添架水管橋「道路橋に添架」
53 パイプ・イン・パイプ工法「掘削が困難な場合の管路更新工法」
54 更生工法「既設管を生かして補強」
55 推進工法(その1)「油圧ジャッキにより管を押し出しトンネルを構築」
56 推進工法(その2)「既設管を破壊して敷設する改築推進工法」
57 シールド工法「地盤崩壊を鋼製円筒で防ぐトンネル工法」
58 海底配管「離島への水道管整備」
59 沈埋工法「溝に管を沈めて安定液で固化」

第6章 水道管トラブル

60 キャビテーション「圧力差で生じる気泡によるトラブル」
61 ウォーターハンマ「流速の急激な変化で管内圧力が上下する」
62 赤水、青水、白水、黒水「水道水の着色トラブル」
63 金属の腐食「湿食と乾食」
64 孔食、すき間腐食、粒界腐食「局部腐食 その1」
65 異種金属接触腐食、電食、微生物腐敗「局部腐食 その2」
66 応力腐食割れ「合金の腐食」
67 水道管の凍結「凍結膨張による破裂防止」

【コラム】
●鉛とワイン
●磁石につくステンレスとつかないステンレス
●ダウジング
●サイフォン式コーヒー
●人の血管と上下水道
●ギロチン破断

参考文献

高堂 彰二(こうどう・しょうじ)

1957年岡山県倉敷市に生まれる
1981年日本大学理工学部土木学科卒業
高堂技術士事務所
埼玉県大学非常勤講師
NPO法人環境技術士ネットワーク副理事長、事務局長
一般社団法人技術士PLセンター理事
資格:技術士(総合技術管理部門、上下水道部門)、APEC エンジニア(Civil)、環境カウンセラー(事業者部門)、一級土木施工管理士、測量士

●主な著書
『トコトンやさしい水道の本』日刊工業新聞社
『トコトンやさしい下水道の本』日刊工業新聞社
『トコトンやさしい土壌汚染の本』日刊工業新聞社
『トコトンやさしい環境汚染の本』日本工業新聞社
『イラストでわかる土壌汚染』技報堂出版
『技術には専門の監査が必要だ!』日刊工業新聞社
『技術士第二試験上下水道部門対策&重要キーワード』日刊工業新聞社

コメント

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