とと姉ちゃんのモデル・大橋鎮子のエッセイ!
『暮しの手帖』の理念から戦後日本がわかる?
NHK『朝の連続テレビ小説「とと姉ちゃん」』がはじまった!
NHK『朝の連続テレビ小説「とと姉ちゃん」』が始まりました。
主題歌を宇多田ヒカルさん!“とと”ことヒロインの父親役は西島秀俊さん!で、その弟役は向井理さんですよ。
こりゃ見ないといかん!と、放送を楽しみに待っていました。
そして、ヒロイン「とと姉ちゃん」のモデルである大橋鎮子さんのエッセイを手に取りました。
エッセイ・大橋鎮子『「暮しの手帖」とわたし』で知ったこと
『「暮しの手帖」とわたし』は、大橋鎮子さんのエッセイです。
大橋鎮子さんは、現在も刊行され続けている『暮しの手帖』の創刊者の一人です。
幼いころに父親を肺結核で亡くし、ご自身も、大学に進学するも結核を患い療養を余儀なくされ、日本読売新聞社に入社。第二次世界大戦を経て、編集者・花森安治と出会い『暮しの手帖』創刊に至ります。
『暮しの手帖』の理念を通じて、戦後日本の「暮らし」を再考します。
そして、戦後の“働く女性”大橋鎮子さんの姿は、現在の男女にとっても、学ぶべきことがあると感じました。
日本人の新しい「暮らし」を提案
雑誌『暮しの手帖』は今でも人気誌です。あさよるも毎号、必ず目を通しています。
以下余談ながら……今月号(『暮しの手帖81』2016年4-5号)の特集「チャーハンの極意」はなかなか、見ているだけで目から幸せになれる特集です。
春の刺繍を提案してくださった、刺繍作家の樋口愉美子さんの作品にも一目惚れでした。ネットで樋口さんの他の作品も拝見し、どれもステキ!久しぶりに刺繍がしたいです。
余談終わり!
「暮しの手帖」の理念に触れる
と、あさよるも愛読している『暮しの手帖』には、創刊時から続く理念があるのです。
これは あなたの手帖です
いろいろのことが ここには書きつけてある
この中の どれか 一つ二つは
すぐ今日 あなたの暮らしに役立ち
せめて どれか もう一つ二つは
すぐには役に立たないように見えても
やがて こころの底ふかく沈んで
いつか あなたの暮し方を変えてしまう
そんなふうな
これは あなたの暮しの手帖です大橋鎮子『「暮しの手帖」とわたし』p.87
第二次世界大戦で、日本人はたくさんのモノを亡くしました。そうなってしまったのは、みんなが「暮し」を大切にしなかったからではないだろうか?
大橋鎮子さんは戦時中、日本読売新聞社から日本出版文化協会で秘書として勤務していました。日本出版文化協会は、内閣情報局のもとで、出版物を検閲、統制する団体です。当局の意に沿わない内容は、出版できません。
言論統制が敷かれており、大橋鎮子さんはそれを間近で見たのかもしれません。
その時代を生き抜いた、生き残った人の“使命感”があるのかもしれません。『暮しの手帖』の理念は、そういったバックボーンを持っています。
「毎日の暮しに役立ち、暮しが明るく、楽しくなるものを、ていねいに」
大橋鎮子『「暮しの手帖」とわたし』p.86
戦後の日本は、まさに文字通り、物理的に「明るく」なった時代でした。
第二次大戦中、灯火管制(とうかかんせい)と言って、夜間の家の明かりにも規制がありました。外に明かりを漏らさぬよう、窓を覆い、電球にも覆いを被せなければなりません。
戦争が終わることは、街が明るくなることだったのです。
家の中も蛍光灯で明るくなり、街には水銀灯にネオン管。煌々と光るテレビ画面に夢中になり、今では眩いばかりのLED!
現在も「丁寧なくらし」が求められている
焼け野原の中、なにもかも失った中から、新しい、明るい生活を提案し続けてきたのが『暮しの手帖』だったのです。
現在でも、行き過ぎた効率化やテクノロジーに頼りきった生活から、新たな「暮し」が提案され続けていますよね。「丁寧なくらし」や「スローライフ」など、我々の「暮し」の再考に迫られています。
きちんと、創刊時からの理念が貫かれているのですね。
フットワークで生活の定番を模索する
戦後、再出発を始めた日本は、「暮し」の何もかもを模索し続けます。
大橋鎮子さんもアメリカへ渡り、異国の「暮し」に触れ、驚きと多くの発見をしました。
もちろん、日本古来の良い物もたくさんありますが、同じように外国にも素晴らしい物があります。良いところを取り入れ、日本人仕様にローカライズされてゆく様子が詳しく書かれ、興味深かったです。
食生活も様変わりしてゆく中で、台所・キッチンも変わってゆきました。『暮しの手帖』は10年にも渡るキッチンの研究を続けました。その結果、材質や価格からステンレス製の流しを採用。
あさよる家の台所も、ステンレスの流しですから、そういう経緯があったのかと知れて良かったです。
男性にとっての『「暮しの手帖」とわたし』
大橋鎮子さんは女性ですから「女性の働き方」「女性の生き方」に着目してしまいがちですが、一人の人の随筆として男性も十分楽しめます。
仕事への姿勢や、指針や方針を失わない姿には、憧憬を感じます。
また、編集者でありデザイナーの花森安治さんというビジネスパートナーと共に、時代を切り開き続けた様子って……「昔の人は羨ましいなあ」と少々嫉妬しつつも(苦笑)、ひたむきに働く大橋鎮子さんの姿には、励まされる自分もいました。
ですから、読者の性別は問わない内容でしょう。『暮しの手帖』ファンも、女性だけではありませんからね。
NHK朝の連続テレビ小説「とと姉ちゃん」を楽しむ
2016年4月4日からスタートしたNHK『朝の連続テレビ小説「とと姉ちゃん」』のモデルなのが、大橋鎮子さんなんです。
あさよるも、それキッカケでこの本を手にしたのですが、実はまだ見れていないんですよね><
まだ始まったばかりですので、今のうちに追いつきます(`・ω・´)ゞ
NHKの情報なのでも、「とと姉ちゃん」のキャストの方がたくさん出演されているのを見て、ワクワクしています。
『「暮しの手帖」とわたし』のおすすめポイント
戦後創刊された『暮しの手帖』の経緯に触れることで、現在の「暮し」を再考できます。なにげなく使っている道具や習慣も、こうやって試行錯誤の中、新しく生み出されたものなんだと知れることで、自分の暮しも見つめなおしたくなりました。
過去を知ることで、将来のことも考えてみようという気持ちになります。
戦後なにもないところから出発した大橋鎮子さんですが、「なにもない」という意味では現在の日本も同じかもしれません。未来を見つめ、新しい価値を提案し続ける様子は、とても励まされました。
そして、『暮しの手帖』の読者の方には、もちろんオススメ!
付録として、過去の「編集者の手帖」が収録されています。付録なのでページ数は少ないですが、昭和時代の空気感が感じられて面白かったです。昭和史好きにもオススメかも?
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「暮しの手帖」とわたし
- 大橋鎭子
- 暮しの手帖社
- 2010/5/15
目次情報
先輩のこと
一 花森安治を出会う
二 子ども時代、そして父と母、祖父のこと
三 第六高女時代
四 戦時中の仕事、そして暮らし
五 「暮らしの手帖」の誕生
六 「暮らしの手帖」一家
七 手紙でつづるアメリカ視察旅行
八 「暮らしの手帖」から生まれたもの
九 すてきなあなたに
今日も鎮子さんは出社です 横山泰子
付録 「暮しの手帖」から
コメント
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