石川幹人『人は感情によって進化した』を読んだよ

ゆずのライブで感じた野生

この夏、2015年8月16日に横浜スタジアムにて、ゆずのライブへ足を運びました。前日の8月15、16日と二日間のライブで、私は運良く二日目のチケットを手に入れられたのです。

ライブの模様が両日ともCDになって発売されており、収録曲を参照していただくと、ファンの方なら分かってくださるかと思うのですが、ゆずがデビュー前から歌っていた古い曲や、CD未収録の曲も披露され、ライブへ来れてよかったと思いました。

中でも聞けて嬉しかったのは『心の音』という、ゆずのファーストアルバム『ゆず一家』に収録されている曲で、2004年7月11日、神戸ワールド記念ホールにて、体育館ツアー2004「夢の地図」で一度聞いた以来だったように記憶しています。このツアーの模様は限定でDVD化されています。
もう一曲『ジャニス』という、シングル『心のままに/くず星』のカップリング曲は発売当初から大好きだったのですが、この度始めてライブで聞けてとても嬉しかったです。
ライブの様子をCDで聞き直し、あの嬉しさがこみ上げる瞬間を再び思い出しました。

さて、そのライブ中の出来事です。
CDにも音が入っているのですが、ライブ途中から夕立が降り始め、どんどん雨脚は強くなり、とんでもない豪雨に見舞われました。横浜スタジアムは屋外の野球場ですから、レインコートや雨の準備もしていましたが全身ずぶ濡れでした。こんな大雨に合うのは生まれて初めてです。これまで経験したことのない雨量の雨を、しかも屋外で全身にもろに浴びてしまうという経験でした。
幸いなことに、風や雷はなく、ただ雨粒がぼたぼたと地面に落ちる夕立でしたから、ライブは滞り無く続行され、ライブの終わりにはすっかり良い天気で、全身ずぶ濡れでなにやらよく分からないテンションで横浜スタジアムを後にしました。

しかし、やはり自然現象が相手ですから、緊張したのも事実です。
突風が吹いたり雷が鳴るようなら、すみやかにこの場を立ち去るべきだと思いましたが、大勢の人が一箇所に集まっている場です。どのタイミングで席を離れるべきか、前もって移動を開始すべきなのか、指示を待つべきか。はたまた、一般のイベントでどこまで的確な避難指示がなされるのだろうか……とグルグルと考えあぐねていました。
暫く雨に打たれ雨脚はどんどん強くなりましたが、風も雷も心配がなさそうだと判断してからは、豪雨で霞むステージを楽しみました。

ジャングルや草原で生きた記憶、群れで生きた記憶

この、自分の中で湧き上がる不安や、周りと同じ行動を取ろうとする集団心理は、『人は感情によって進化した』によると、人の野性的な、人類の遠い昔の記憶だそうです。

突風や雷など嵐に見舞われると、恐怖を感じそこから逃げ出す個体が生きながらえ、恐怖しなかった個体は淘汰されてしまったから、その子孫である我々も風や嵐に恐怖する遺伝子が引き継がれています。
とても原始的で、野性的な気持ちですね。

次第に人類は群れを作り、社会を持つようになってからは、皆がそれぞれバラバラの行動を取ると、群れが維持できなくなってしまいます。自分勝手な振る舞いをする個体は淘汰され、リーダーの指示に従う協調性の高い個体の方が子孫を残しやすかったのでしょう。社会的な気持ちです。

本書では前者を「野生の心」、後者を「文明固有の心」と呼び分け、これら二つの感情が絡まり合って人の感情を生み出します。

種の保存ための心の動きと、私という個の心

私たちは文明を持ち、自然の脅威よりも社会的に生きることの方が重要になりました。
雨風に不安になる感情よりも、周りの様子を見て、みんなと同じ行動を取ろうとする心の方が、長く大きな目で見ると、人類にとっての生き残り手段なのかもしれません。

と言っても、不安なものは不安だし、怖いものは怖いのです。
現在の横浜スタジアムで雨に打たれた私の心の中でも、「野生の心」と「文明固有の心」がせめぎ合っていたようです。

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Information

人は感情によって進化した

  • 著者:石川幹人
  • 発行所:ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 2011年6月15日発行

目次情報

  • はじめに
  • 序章 「野生の心」と「文明の心」
  • 第1章 恐怖と不安
  • 第2章 怒りと罪悪感
  • 第3章 愛情と友情
  • 第4章 好きと嫌い
  • 第5章 嫉妬と後悔
  • 第6章 自己顕示欲と承認
  • 第7章 楽しさと笑い
  • 第8章 悲しみと希望
  • 第9章 信奉
  • おわりに
  • 注および参考文献

著者略歴

石川幹人(いしかわ・まさと)

1959年東京生まれ。東京工業大学理学部卒業。同大学院物理情報工学専攻、企業および国家プロジェクトの研究所をへて、現在明治大学情報コミュニケーション学部教授。大学・大学院では、生物物理学・心理物理学を学び、企業では人工知能の開発に従事。遺伝子情報処理の研究で博士号(工学)を取得。専門は認知情報論および科学基礎理論。著訳書に、『心の認知の情報学』(単書/勁草書房)、『入門・マインドサイエンスの思想』(共編著/新曜社)、『心とは何か~心理学と諸科学との対話』(共編著/北大路書房)、『だまされ上手が生き残る~入門!進化心理学』(単著/光文社新書)、『ダーウィンの危険な思想』(共訳/青土社)などがある。

―石川幹人『人は感情によって進化した』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2011)カバー

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