『宇宙は何でできているのか 素粒子物理学で解く宇宙の謎』を読んだよ

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村山斉『宇宙は何でできているのか 素粒子物理学で解く宇宙の謎』書影

スピッツの『惑星のかけら』という楽曲があります。1992年に発売された同タイトルのアルバムの表題曲で、今でもライブで披露される人気曲です。


タイトルにもなっている「惑星のかけら」とは、惑星、すなわち地球のかけら、地球の一部である「君」を歌っているのでしょう。もちろん、「僕」も同じ地球のかけらです。「君」と「僕」という相容れない存在も、「惑星のかけら」と抽象度をぐんと上げると、一つの同じものになります。
二つの別個の存在が、同じ概念の中に溶け合うイメージは、とっても艶めかしくは思いませんか?

さらに、1999年に発売されたシングル『流れ星』も、やはり「星」という言葉は、何かの物事を抽象度を上げて表現しているのではないかなぁと思います。


「流れ星 流れ星 すぐに消えちゃう君が好きで」と歌詞にもあるように、流れ星はパッと目に入ったときにはもう、消えてなくなってしまっています。儚さやとりとめのなさは、生き物の命のようでもありますし、胸の中に浮かんでは消える気持ちや考えのようでもあります。
そして、「流れ星」もまた、星くずの一部です。もしかしたら人工衛星かもしれないけれども、これも地球の材料で造られた地球のかけら。抽象度を上げれば、みんな「星のかけら」といえます。ですから、私たちを「星」に例えることもできるのです。

「ウロボロス」というギリシア神話に登場する蛇がいます。
自分のしっぽを自分で飲み込んで、一つの輪になった姿をしています。龍の姿を描かれることもあり、中国の神獣「玄武」も同じ仲間なのかなぁと思いつつ、確認していません。が、世界で広く使われるモチーフではあるようです。

そして、素粒子物理学の世界でも「ウロボロスの蛇」は、この宇宙の姿を現すものとしてたびたび登場します。
宇宙や銀河という壮大な途方もなく大きな存在と、私たち地球、そして私たち生物やDNA、もっと小さな原子や原子核、さらにもっともっと小さな素粒子。この素粒子は宇宙や銀河という壮大な存在を作り、それらは私たちの地球を、私たち自身を、そしてもっと小さな原子や原子核たちを……と、大きな宇宙と小さな素粒子がグルグルと一つの輪になって連なっているのです。

私たちの宇宙はどうやってできているのか、私たちの肉体は何でできているのかと、細かく細かく物質を分け、どんどん小さく小さく切り刻んでゆきます。すると、「これ以上分けられない!」という単位に行きつきます。これが「素粒子」です。
素粒子は、これ以上小さく分けられない単位です。

これ以上わけられない、そんなに小さな「素粒子」を『見る』のも大変です。私たちの目で見ている光も、粒子ですから、それよりも小さなものを直接見ることはできませせん。さらにニュースでも時折登場する「ニュートリノ」など、質量の小さな物質は、どんなものでも突き抜けてしまうので、観測するのは難しく、大掛かりな施設が必要です。しかも、驚くべきことに、1秒間に数10兆個ものニュートリノが、私たちの体も突き抜けているのです。自分の体を「物質が突き抜けている」なんて、考えてみると怖い気もちょっとしますね。

『宇宙は何でできているのか 素粒子物理学で解く宇宙の謎』では、

  • 物質は何でできているのか
  • その物質を支配する基本法則はどんなものか

と、大きく二つのテーマを扱いながら、重力、電磁気力、強い力、弱い力の「4つの力」や、暗黒物質、暗黒エネルギーについて、宇宙に大量にあるはずの「反物質」が綺麗さっぱり消えてなくなっているナゾなど、現在の素粒子物理学を知る上で必要な知識が平易な文章で紹介されています。

日本物理学会のシンポジウムで、著者の村山先生の講演を聴講したことがあります。最近また、「重力派」が見つかったとのニュースで、村山先生がお話をなさっている記事を読みました。日本時間の2016年2月12日(米国時間2016年2月11日)にアメリカに拠点を置く LIGO という重力波天文台が、ブラックホールから発せられる「重力波」が観測されたことを発表しました。たくさん、新聞やネットでも大々的に報じられていたので、目にされた方が多いでしょう。
とっつきにくい話かもしれませんが、本書は理解の手助けになる一冊ではないかと思います。

宇宙は何でできているのか 素粒子物理学で解く宇宙の謎

  • 著者紹介:村山斉
  • 株式会社 幻冬舎
  • 2010年9月30日

目次情報

  • 序章 ものすごく小さくて大きな世界
    宇宙という書物は数字の言葉で書かれている/10の27乗、10のマイナス35乗の世界/世界は「ウロボロスの蛇」
  • 第1章 宇宙は何でできているのか
    リンゴと惑星は同じ法則で動いている/リンゴの皮の部分に浮かぶ国際宇宙ステーション/「4光時」の冥王星まで20年かかったボイジャー/太陽光を分析すると太陽の組織がわかる/「発見できないが存在する」と予言されたニュートリノ/ニュートリノは毎秒何十兆個も私たちの体を通り抜ける/すべての星を集めても宇宙の重さの0.5%/宇宙全体の23%を占めるお化けエネルギーとは/ビッグバンの証拠になった太古の残り火/宇宙は加速しながら膨張し続けている/こんなにわからないことがあるとわかった21世紀
  • 第2章 究極の素粒子を探せ!
    皆既日食で証明されたアインシュタイン理論/なぜ見えない暗黒物資の「地図」をつくれるのか/遠くの宇宙を見るとは昔の宇宙を見ること/光も電波も届かない、宇宙誕生後38万年の厚い壁/物質の根源を調べることで宇宙の始まりに迫る/電子の波長を短くして解像度を上げる電子顕微鏡/加速器で誕生直後の宇宙の状態をつくりだす/私たちの体は超新星爆発の星くずでできている/原子が土星型であることを明らかにしたラザフォード実験/これ以上は分割できない素粒子、クォーク/「標準模型」は20世紀物理の金字塔/第1世代のクォーク、「アップ」と「ダウン」/誰も探していないのに見つかってしまった謎の素粒子/クォークには3世代以上あると予言した小林・益川理論/物質は構成せず「力」を伝達する素粒子もある
  • 第3章 「4つの力」の謎を解く――重力、電磁気力
    重力、電磁気力、強い力、弱い力/力は粒子のキャッチボールで伝達されると考える/質量はエネルギーに変えられるという大発見/「質量保存の法則」の綻びにブリタニカ執筆者も興奮/性質は同じで電荷が反対の「反物質」/毎秒50億キロをエネルギーに変える太陽の核融合反応/不確定性関係――位置と速度は同時に測れない?/エレクトロニクス技術として実用化された「トンネル現象」/コペンハーゲン解釈――神はサイコロを振るらしい/同じ場所に詰め込めるボソン、詰め込まないフェルミオン/原子と原子は電磁気力でくっついている/電磁気力は粒子が光子を吸ったり吐いたりして伝わる/電磁気力の届く距離も不確定性関係で決まる/物理学史上もっとも精密な理論値
  • 第4章 湯川理論から小林・益川理論へ――強い力、弱い力
    未知の粒子の重さまで予言していた湯川理論/湯川粒子はアンデス山脈で見つかった/新粒子発見ラッシュで研究者たちは大混乱/「なぜか壊れない粒子」の謎をどう説明するか/陽子の寿命は宇宙の歴史よりとんでもなく長い/思いつき自体がストレンジネス保存の法則/陽子・中性子はクォーク3つ、中間子はクォーク2つ/3つの色がついている?単独では取り出せない?/クォーク理論を裏付けた「11月革命」/強い力を伝えるのはグルーオン/クォークを取り出せないのはグルーオンの色荷のせい?/クォークが元気だから体重が増える?/太陽が燃えているのは弱い力のおかげ/月とTGVまで発見してしまった大型加速器/弱い力を伝えるのはWホゾンとZホゾン/パリティを保存しない「タウ‐シータの謎」/「右」と「左」には本質的な違いがあった!/「CP対象性の破れ」を説明した小林・益川理論/「クォークは2世代でなく3世代以上ある」ことが肝心/「三角形」をめぐる日米の激しい実験競争/素粒子に質量を与える? 正体不明のヒグス粒子/右利きが多いのは「自発的対称性の破れ」?
  • 第5章 暗黒物資、消えた反物質、暗黒エネルギーの謎
    ゴールに近づいたと思ったらまた新たな謎/暗黒物資がなければ星も生命も生まれなかった/「超ひも理論」は夢の「大統一理論」を実現するか?/本当の次元は10次元まである?/暗黒物資検出、一番乗りはどこか?/反物質のエネルギーは0.25グラムで原爆並み/物質は10億分の2の僅差で反物質との生存競争に勝利/イチゴ味がチョコ味に? ニュートリノ振動の正体/東海村から神岡へニュートリノビームを飛ばせ!/収縮? 膨張? 宇宙に終わりはあるのか?/宇宙の将来をめぐる仮説は「何でもアリ」の状況/1人1人の人生とつながる素粒子物理学
  • あとがき

著者紹介

村山 斉(むらやま・ひとし)

一九六四年生まれ。
八六年、東京大学卒業。九一年、同大学大学院博士課程修了。
専門は素粒子物理学。東北大学助手等を経て二〇〇〇年よりカリフォルニア大学バークレイ校教授。〇二年、西宮湯川記念賞受章。
〇七年、文部科学省が世界トップレベルの研究拠点として発足させた東京大学数物連携宇宙研究機構(IPMU)の初代機構長に就任。
主な研究テーマは超対称性理論、ニュートリノ、初期宇宙、加速器実験の現象論など。世界第一線級の科学者とし協調して宇宙研究を進めるとともに、研究成果を世界に還元するために、市民講座や科学教室などで積極的に講演活動を行っている。

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