『漢方的生き方のすすめ』|面白い話・好奇心は健康にいい?

こんにちは。あさよるです。毎日つらつらと読書をしていると、時折思いがけない本に出会うときがあります。今回手にした『漢方的生き方のすすめ』もそうでした。正直、なんかインチキくさい本なのかな~と読み始めたのですが(すみません……m(__)m)、思いがけなく背筋が伸びる読書体験でした。著者の丁先生の半生は、極貧の子ども生活から、働きながら大学の医学部に入り、その後研究者として評価されながら、漢方の道に進み、自力で人生を進んできた様子が、とても励まされるものでした(`・ω・´)b

それだけじゃなく、話題が古今東西のアレコレにポンポン飛躍しながら展開してゆき、知らないこと&これまで持っていなかった切り口ばかりでオモロー。だけど、軽く読める内容だし、分厚い本でもないし、サクッと楽に読めて良かったです。

「漢方的」な生き方とは

本書『漢方的生き方のすすめ』は、漢方とか薬膳とか、体にいい習慣が紹介されている本なのかな? と思い手に取ったところ、全く内容が違うものでした。そして、最初の想像よりずっと良い読書経験となりました。

本書は医師であり漢方医でもある丁宗鐵さんと、イラストレーターの南伸坊さんの対談で、主に丁先生のお話を南さんが伺う形式で構成されています。南伸坊さんが病気を患った際、丁先生と巡り合い、丁先生のお話が面白く話を聞きに病院へ通っていらしたそうです。それが、本書の企画に繋がったというわけですね(幸いにもご病気も完治なさったそう)。

内容は、丁先生の生い立ちから、医師になり、また西洋医学の研究者から東洋医学へと移ってこられた経緯を話しながら、つらつらと古今東西のアレコレとりとめもない話が展開されます。それが、本書を通して見ると「漢方的な生き方」が浮き上がってくるという仕掛けです。

なるようになる・なるべくしてなる

丁先生は、貧しい中お父様の仕事を手伝いながら勉強し、医学部へ進みます。そこで学生時代、漢方に触れほかの大学にも出入りしてたそう。その経験から、漢方の研究に誘われ現在に至ります。といっても、西洋医学の研究が評価されアメリカの大学に招かれた経験もおありで、とても優秀な方なんですね。

「なるようになる」を体現されておられて、流れに逆らうことなく、目の前の課題をただこなしていくうちに、流れ流れて今に至るような生き方が、漢方的なのかなあと。ただし、丁先生の場合は「なるようになる」と言っても、とてもレベルの高いお話なんですけどね(;’∀’)

西洋科学を否定しないし、これが「中庸」

丁先生ご自身が医師で、西洋医学の研究をなさっていた経緯もあり、本書では決して西洋医学・西洋科学を否定しません。漢方こそが万能と言っているわけでもありません。そのへんのバランスのとり方が「中庸」なのかもしれないなあなんて思いました。

この「中庸」という考え方を見てみますと、

ちゅう‐よう【中庸】

[名・形動]
かたよることなく、常に変わらないこと。過不足がなく調和がとれていること。また、そのさま。

中庸(ちゅうよう)とは – コトバンク

「かたよらない」「調和」というキーワード、すんなり理解できる人と、なかなか感覚的にわからない人がいるのではないかと思います。あさよるは完全に後者です。この「中庸」という感覚が、なかなかわからない。あーだこーだ苦戦しながら理解をしようと挑戦しております。

抗うわけでもなく、かといって流されるわけでもなく、あるがままにあり続けられる生き方っていいね。

丁先生の生き方がすごい<(_ _)>

本書では、丁先生のご経験に交えて、古今東西の医学や科学、歴史や雑多な知識がポコポコと飛び出します。話はあっちへこっちへ飛び散りながら、だけど一貫して「漢方的な生き方」の話題に着地します。

江戸時代、わずかに許されていた貿易のほとんどは外国から漢方薬を買うためだったとか、だけど薬を輸入するにはコストがかかるから江戸時代に朝鮮人参の栽培の研究が始まったとか、「へぇ~」と感心する話ばかり。

漢方や東洋医学は、日本のみならず東アジアで発達した医学であり、漢方・東洋医学を知ることは、東アジアを知ることでもあるんですね。もちろん、東アジアの歴史だって、他の地域と影響しあっていますから、どんどん関心が広がっていきますね。

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漢方的生き方のすすめ

目次情報

はじめに 丁先生の雑談療法

第一章 自分のはじまり

老人性メランコリー
ストレスとがん
楽しい病院
校庭の家
宗教と哲学
ロイヤル・ストレート・フラッシュ
貧しい原因

第二章 漢方は歴史

勉強するな
逆の教育
見えない影響
泥人間
寺の生活
勉強時代
鍼の学生

第三章 日本の抗体

発掘少年
近所の歴史
切支丹弾圧
隠れ切支丹

第四章 漢方医の心

漢方に還る
迷いを断つ
漢方と西洋

第五章 異邦人

ノーベル賞接近
静かな国王
シイタケ
免疫と抗がん剤
学問の在り方
治療費は高い

第六章 人体の力

ニンジン
中国と日本人
アメリカの江戸復帰
江戸の医者
インフルエンザ
末病ということ
東亜の悩み

第七章 静かな健康

中庸の時代
生命の空間
三つの要素
独楽は回る

あとがき

丁 宗鐵(てい・むねてつ)

1947年東京生まれ。医学博士。横浜市立大学医学部卒業。同大学大学院医学研究科修了。日本東洋医学会漢方専門医・指導医。現在、日本薬科大学教授、学長。漢方医療の専門医として、『主治医がみつかる診療所』など、テレビ・ラジオでも活躍。著書に『名医が伝える漢方の知恵』『がんが逃げ出す漢方力』『正座と日本人』など多数。

南 伸坊(みなみ・しんぼう)

1947年東京生まれ。イラストレーター、装丁デザイナー、エッセイスト。雑誌『ガロ』編集長を経てフリーに。著書に『丁先生、漢方って、おもしろいです。』『老人の壁』『解剖学個人授業』(共著)、『本人伝説』『本人遺産』『おじいさんになったね』『ねこはい』『ねこはいに』など多数。

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