やなせたかし『あなたも詩人 だれでも詩人になれる本』詩とメルヘン

やなせたかし『あなたも詩人 だれでも詩人になれる本』書影 90 文学

ノートに、教科書の角に、誰にも見せない言葉を紡いだ経験、ありませんか?だれもが、かつては詩人でした。

今も詩を書き続けている人もいるでしょうし、しばらくお休みしている人もいるでしょう。

『誰でも詩人になれる本』は作家であり詩人の、やなせたかしさんの「詩」に関する指南書です。

だれにも届く、詩

と言っても、やなせたかしさんははっきりと、「詩は添削するものじゃない」「詩は学ぶものじゃない」と言いきります。もっと言えば、「詩をたくさん読まない方がいい」「難しい顔して取り組むものじゃない」とも言います。

だからと言って「なんでもいい」「思いついたままでもいい」というものでもありません。難しいものですね。

開かれた詩を書く。ひとりよがりにならない

自分の胸のうちにあるものを、ただ取り出して並べるだけでは、それは自分にしかわかりません。独りよがりです。

読者にもわかるように、共感されるように詩をひねり出すのです。作曲家のいずみ・たく さんは、使いきったはみがきのチューブからしぼるように、と表現しています。

ただ難解で、頭を抱えて考えてもわからない詩よりも、人の心にひびく詩を、やなせさんは好きだと言いいます。だからといって読者にこびたり、ウケばっかり狙ったものを良しともしない。このさじ加減がこれまた難しい。

子供を子供扱いしないということ

子供たちの詩には、名作が紛れています。幼い子供は、自分のたどたどしい言葉をめいっぱい駆使して、表現をします。だから、ズバリそのものの確信を突く表現が生まれ得るのです。

だけれども、10年も生きれば色気づいてこましゃくれた表現を身につけてゆくものだから、どんどん面白味のないものになってゆきます。大人が作る詩と変わらなくなってしまうんですね。

詩を書くというのは、小学1年生と同じ土俵に上がることです。子供だからって、子供扱いしない。感性と感性のぶつかりあいです。

だれにも届く、だれもが詩人

心にひびく詩というのは、子供の心にも、年寄りの心にも、なにかを訴えかけるものです。まさに、誰の心にも響くのです。

そして、誰もが詩人になれます。今すぐなれます。

いつかあの頃を思いだして、詩を書きましょう。

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あなたも詩人 だれでも詩人になれる本

  • 著者:やなせたかし
  • 発行所:かまくら春秋社
  • 2009年2月6日

目次情報

  • はじめのことば
  • 第1部 詩への細道
    • 1 この本を読みはじめる前に読者への三つの質問
    • 2 世の中に詩人になるほど簡単なことはない
    • 3 どんな詩がいい詩なのか?詩人とは何か?――終わりに八木重吉
    • 4 ではいったいどういうふうにして詩をかくのか?――終わりに三好達治
    • 5 心がなければ史がかけないが しかし心がないほうがいいという話――終わりに中原中也
    • 6 ぼくはどういうふうにして詩をかくのか、というようなこと――そして、つくだ煮の小魚
    • 7 あなたは悲惨な運命と薄幸と不遇を望みますか?――そして、石川啄木や中原中也になりたいか?
    • 8 詩は名前でかくものではないこと それならば、たとえば三歳の幼児でも詩はかけること
    • 9 きらめく一群の星屑の中から ぼくの好きな無名の詩人たち
    • 10 一群の詩のあとのちょっとした蛇足と ぼくが叙情詩を好む理由
  • 第2部 星屑ひろい
    • 1 詩がかけないのが本当の詩人 山村暮鳥の晩年の詩風
    • 2 最高の傑作は俗悪スレスレ 島崎藤村と中原中也
    • 3 心にひびく珠玉の言葉 堀辰雄と『青猫』 ぼくと井伏鱒二
    • 4 南方系詩人と北方系詩人 北原白秋と高木恭造
    • 5 翻訳詩は真実をつたえるか? ジャック・プレヴェールの「バルバラ」
    • 6 児童詩と老人詩と分類していいか ジャン・コクトオと子供の詩の差
    • 7 真の個性とは? 川上澄生と熊谷守一
    • 8 誌と絵について デカダンスの詩人・村山槐多
    • 9 美しい人 無名の詩人・菅野美智子
    • 10 人間とゴリラを区別するポイント 自由律と定形律
    • 11 夭折する詩人郡 矢沢宰とブッシュ孝子
    • 12 へたも詩のうち たとえ詩人全集にのっていなくても心を直撃する詩はあること
    • 13 難解と通俗の間
    • 14 「人生の並木路」の詩人・佐藤惣之助
    • 15 中川李枝子さんとケストナーとワルター・トリヤ―について
    • 16 単純化ということについて 有吉佐和子と室生犀星
    • 17 永久の未完成こそ完成 自分の世界とは?――片桐ユズルの「幼少時代」
    • 18 創作は夢みるようにはいかない 遊んでいる時は仕事 仕事している時は遊び
    • 19 詩は詩人たちのものか? 風は決して難解に吹かない 百戦一勝のチャンスは誰にでもある
    • 20 えらい詩人が賞める詩はいい詩か? 小沢昭一のド素人論
    • 21 詩は添削すれば死 輝ける星・大関松三郎
    • 22 はみがきのチューブをしぼる 空気中に漂う詩神の声……いずみ・たく
    • 23 題名も詞のうち 詩をつくるのも人生の娯楽
    • 24 宮沢賢治のアメニモマケズは賢治の代表作なのか? というささやかな疑問
  • 第3部 風の口笛
    • 1 ある落語家の言葉――「自分の中に取りいれる才能」 そして、詩人になりたいならあまり詩の本は読まないこと そして「雲雀」
    • 2 ぼくの足がサイダーのんじゃったこと そして、カミナリ見物が大好きな高田敏子さん
    • 3 現在の社会は一割まちがっていても九割は正当と信じて自己反省すること そして「空の羊」
    • 4 子供はアンデルセンだってメじゃないこと 赤ちゃん言葉なんか使うなということ そして「ああ君を知る人は」
    • 5 口惜しかったらけなすよりも自分でつくってみせること そして、ぼくのやりかた そして「ぼくの道」と「ふるさと」
  • あとがき

著者紹介

やなせ たかし

一九一九年、高知県生まれ。旧東京高等工芸(現千葉大)図案科を卒業。漫画家であると当時に童話画家であり、詩人であり、作家であり、その愛と詩情にあふれる世界は多くの読者を魅了している。著書に『愛する歌』他、レコード『手のひらを太陽に』他。現在は季刊誌『詩とファンタジー』の責任編集を行っている。

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