文章の書き方の指南書
手番中の定番です
「文章読本」のさきがけ!
「文章読本」というタイトルの書籍は、多数の作家が手がけています。
1934年、谷崎潤一郎による『文章読本』刊行され、その後、他の作家による「文章読本」が次々と発表されました。
文豪たちによる文章の書き方のレクチャーって、とっても贅沢な企画ですね。
あさよるも、以前から気にはなっていました。今回はじめて、まずはオリジナルの谷崎潤一郎先生の『文章読本』を手に取りました。
文豪による「文体とは」「文書とは」
「文章を書く」とはどういうことか。文豪・谷崎潤一郎が細かに解説をします。
さて、なんといっても文章のつくり方をレクチャーしているだけだというのに、流れるようなしなやかな文章が美しい(゚A゚;)ゴクリ ここまで圧倒的に「スゴイ」力でもって、文章の書き方を説明されてしまうと、もう納得するしかありませぬ。
さて、「文章とは」ということで、谷崎先生はまず、口語と文語の違い、事務的な書類に使われる文章と、文学的・芸術的文章の違いなど紹介なされています。文章と一口にっても、我々は複数の文体を使い分けていますからね。
また、西洋の言語と日本語の比較をすることで、日本語の持っている特性をよく知ろうと試みがなされます。当然ながら、これはどちらが優れているとか劣っているとかの話ではありません。
西洋の言語と日本語の違いの一つは、「文法」が違うこと。西洋の言語は、「文法」という意味では参考にならないのですね(-_-;) 谷崎先生は、文法は大切だけれども、文法にとらわれすぎてもいけないことをお話しになられています。
そして、文書には「用語」「調子」「文体」「体裁」「品格」「含蓄」と六つの要素があることが紹介されます。
「感性」を研くということはどういうことなのか、文章における感性とは。
『読書読本』を読むと……レベル高すぎる?(T_T)
あさよるは、今ブログなどを毎日書いておるものですから、自分の書く「文章」がとても気になります。自信満々で「ドヤァ!」と更新できれば良いのですが、ご覧のとおりの有様で……(T_T)
自分らしい語り口もありませんし、文体も落ち着かなくって、我ながら「なんだかなぁ…」とorz
谷崎潤一郎先生のありがたい『文章読本』ですが、正直……あさよるにはあまりにもレベルの高い内容だったようです……。
読み慣れない人には読みにくい?
さて、谷崎潤一郎先生の文章に文句つけるなんてとんでもないのですが、しいて言えば、言葉使いや、漢字の使い方が現代とは違います。
文芸作品を読み慣れている人にとっては気にならないでしょうが、普段最新のビジネス書等を読み慣れている方にとっては、見慣れない漢字がたくさん並んでいるかも。
また、古典作品や漢文などからの引用も多いです。いわゆる「教養」が高め。と言っても、小中高と国語や古典をきちんと修めていれば、見知っているものではあります。
また、引用文を読み飛ばしてしまっても、谷崎先生の論を見失うものではないでしょう。気にせず読み進めてゆきましょう(あさよるはそうしましたw)
人と人をつなぐもの
ただただ読み物としても楽しめる一冊。
もちろん、「文章を書く」ということも、改めて考えさせられました。あさよるは、物語のような情緒的な文章を書きませんが、それでも文章の幅を持たしたい!
ブログ執筆はもちろんですが、現代人はプライベートでもやたらと文章を書きます。メールやLINEのやりとりでは、文章の良し悪しでその人のイメージまで連想しちゃってる気がします。
……まるで、短歌の送り合いで距離を縮めていた時代のようですねw
時代を超えて、やっぱり文章、言葉って、人と人を繋ぐものなのですね。
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文章読本
- 谷崎潤一郎
- 中央公論新社
- 1996/2/18
目次情報
一 文章とは何か
◯ 言語と文章
言語―――言語の効用―――思想を伝達すると共に、思想に一つの形態を与える―――言語の缺点―――思想を一定の型に入れる―――言語の働きは不自由であり、時には有害であること―――文章―――言語の文章との区別―――文章の永続性
◯ 実用的な文章と藝術的な文章
文章に実用的と藝術的との区別なし―――美文体―――韻文と散文―――この書は韻文でない文章、即ち散文を説くのを目的とする―――韻文や美文の条件、一 分からせること。二 眼で見て美しいこと、三 耳で聞いて快いこと―――口語文―――小説の文章―――実用的即ち藝術的―――実用文にも技巧が必要であること
◯ 現代文と古典文
口語体と文章体―――口語体を書くコツは文章体を書くコツに同じ―――古典文学―――和文調と漢文調―――和漢混交文―――擬古文―――字画と音調―――「分からせる」ことにも限度があること―――口語体の缺点―――文章の秘訣―――古典分の特色―――今から九百年前の文章―――文章の音楽的効果と視覚的効果―――文章を書くには、読者の目と耳とに訴えるあらゆる要素を利用すべし―――第一の条件―「分からせる」ように書くこと、第二の条件―「長く記憶させる」ように書くこと―――字面―視覚的効果について―――われ〱の国語と形象文字―――日本語の言葉は、漢字と平仮名と、普通三通りに書き得ること―――音読の習慣が廃れたこと―――朗読法―――音読の習慣がすたれても声を想像しないでは読むことができない―――漢字濫用の弊害と音読との関係―――文章を綴る場合には、まずその文句を暗誦し、それがすら〱と言えるかどうかを試すことが必要―――寺子屋式の読み方―――素読―――読書百遍意自ら通ず―――「分からせる」ように書くこと「記憶させる」ように書くこととは二にして一―――文章の感覚的要素―――現代文に見る感覚的要素―――書簡文―候文―――候文の特色―――文章の間隙
◯ 西洋の文章と日本の文章
系統を異にする二国語の間には喩え難い垣がある―――今日の急務は、西洋文の長所を取り入れることではなく、取り入れすぎたために生じた混乱を整理するにある―――支那語と日本語との構造の差異―――われ〱の国語の缺点―言葉の数が少ないこと―――語彙―――国語と国民線―――日本の語彙が乏しいのは我らの国民性がおしゃべりでない証拠―――我が国民性は寡言沈黙を貴ぶ―――巧言令色鮮矣仁―――日本語はおしゃべりに適しないように出来ている国語―――国民性を変えないで、国語だけを競輪することは不可能―――西洋の学問と日本語の文章―――この読本で取り扱うのは、専門の学術的な文章でなく、一般の実用的な文章―――語彙が貧弱で構造が不完全な国語には、一方においてその缺陥を補うに足る長所がある
二 文章の上達法
◯ 文法に囚われないこと
文法的に正確なのが必ずしも名文にあらず―――日本語には西洋語にあるような文法はない―――日本語には正確なるテンスの規則なし―――日本語のセンテンスは主格を要せず―――日本語は取得に困難なる国語―――初学者は一応日本文を西洋流に組み立てる方がよいかも知れないが、相当に文章が書けるようになったら、文法を考えない方が宜しい
◯ 感覚を研くこと
文章のよしあしは曰く言い難し、たゞ感覚を以って感ずべきのみ―――名文とはいかなるものぞ―――長く記憶に留まるような印象を与えるもの、繰り返して読めば読むほど滋味の出るもの―――名文と悪文との差は紙一と重―――文章の味は藝の味、食物の味と同じ―――感覚は、生まれつき鋭い人と鈍い人とがある―――心がけと修行次第では、鋭い感覚をも鋭く研くこことが出来る―――出来るだけ多くのものを繰り返し読むこと、実際に自分で作ってみること―――感覚は何度も繰り返すうちに鋭敏になる―――寺子屋式教授法は感覚練磨の手段―――感覚は、一定の練磨を経た後には、各人が同一の多少に対して同様に感じるように作られている―――文章は人に依って多少好む所を異にする―――甘口と辛口、和文脈と肝文脈―――源氏物語派と非源氏物語派
三 文章の要素
◯ 文章の要素に六つあること
文章の要素、一 用語、二 調子、三 文体、四 体裁、五 品格、六 含蓄
◯ 用語について
異を樹てようとするな―――一 分かり易い語を選ぶこと、二 使い慣れた古語を選ぶこと、三 適当な古語がない時に新語を使うこと、四 古語や新語がない時でも、造語は避けるようにすること、五 むずかしい成語よりは耳馴れた外来語や俗語の方を選ぶこと―――同義語―――最適な言葉はたゞ一つあるのみ―――最初に思想があって然る後に言葉が見出される場合と、言葉あって然る後に思想が纒められる場合と―――最初に使った一つの言葉が思想の方向を定め、文体や文の調子を支配するに至る―――言霊―――言葉の魅力―――人間が言葉を使うと同時に、言葉も人間を使う―――語と文字―――白楽天の心がけ―――古語と新語―――漢字の重宝さから来る弊害―――行動は符牒であることを忘れるな―――職人の技術語を参考とせよ―――略語―――世話に砕ける
◯ 調子について
文章の調子は、その人の天性に依るところ最も多し―――体質と調子との関係―――調子は精神の流動であり、血管のリズムである―――流麗な調子―――センテンスの切れ目のない、一つの連続した文章―――日本文には事実上の主人公あるのみにて文法上の主格なし―――これこそ最も日本分の特徴を発揮した文体―――簡潔な調子―――冷静な調子―――調子のない文章―――言葉の流れ―――流露感―――流れの停滞した名文―――飄逸な調子―――ゴツ〱した調子―――悪文の魅力
◯ 文体について
雅俗折衷体―――一 講義体、二 兵語体、三 口上体、四 会話体―――本当の口語文―――書いた人の声色や眼つきを想像させる役をするもの―――男の話す言葉と女の話す言葉と違うのが日本語の長所―――会話体の特徴、イ 云い廻しが自由であること、ロ センテンスの終わりの音に変化があること、ハ 実際にその人の語勢を感じ、微妙な心持や表情を想像し得られること、ニ 作者の性の区別がつくこと―――われ〱は男女孰れの声を想像しながら文章を読むか―――会話体の文章は作者の性を区別し偉えられる
◯ 体裁について
体裁とは文章の視覚的要素の一切を指す、イ 振り仮名、及び送り仮名の問題、ロ 感じ及び仮名の宛て方、ハ 活字の形態の問題、ニ 句読点―――総振り仮名と字面との関係―――ルビ、総ルビ、パラルビ―――森鴎外の文字使い―――言葉の由来に遡って語源の上から正しい文字を宛てる方法―――日本の文章は読み方がまち〱になることをいかにしても防ぎ難し―――文字使いを、偏えに感覚的要素として扱う方法―――視覚的効果として見た鴎外の文字使い―――文字使いから鴎外と漱石―――スタイル・ブック―――活字の大きさ―――活字の種類―――句読点も合理的には扱い難し―――疑問符と感嘆符―――引用符
◯ 品格について
品格とは文章の礼儀作法―――一 饒舌を慎むこと、二 言葉使いを粗略にせぬこと、三 敬語や尊称を疎かにせぬこと―――品格ある文章を作るには精神的修養が第一―――優雅の心を体得すること―――優雅とは何ぞや―――われ〱の国語の一特色―――日本語は、敬語が驚くほど豊富である―――日本人ほど礼節を重んずる国民なく、日本人ほど礼節にかなう国語なし―――あまりはっきりさせようとせぬこと―――意味のつながりに間隙を置くこと―――われ〱は、生な現実をそのまゝ語ることを卑しむ―――言語と事実との間に薄紙一と重の隔たりがあるのを良しとする―――現代のいわゆる口語文は実際の口語よりも西洋語に近い―――文章の間隙を理解するには昔の書簡文を参考とすべし―――文章の穴―――現代の文章の書き方は、あまり読者に親切すぎる―――言葉は、丁寧な、正式な形で使うべきこと―――ぞんざいな発音をそのまゝ文字に移さぬこと―――東京人の言語の特色―――小説家が会話を写す時の心得―――敬語の動詞助動詞が文章の構成に与える便宜―――敬語は単に儀礼を整えるだけの効用をしているのではない―――敬語は単に儀礼を整えるだけの効用をしているのではない―――敬語の動詞助動詞は美しい日本文を組み立てる要素の一つ―――敬語は我が国語の利器―――女子の文章には敬語を使うようにしては如何―――講義体は敬語を使う文章に敵せず
◯ 含蓄について
含蓄とは何ぞや―――この読本は終始一貫含蓄の一事を説く―――里見弴氏の書き方の特色―――一流の俳優は大げさな所作を演ぜず―――形容詞や副詞の濫費を慎め―――悪文の実例―――比喩について―――技巧の実例―――言葉を惜しんで使う―――「蘆刈」の一節―――要するに感覚の練磨を怠るなかれ
解説 吉行淳之介
谷崎 潤一郎(たにざき・じゅんいちろう)
明治十九(一八八六)、東京日本橋に生まれる。旧制府立一中、第一高等学校を経て東京帝大国文科に入学するも、のち中退。明治四十三年、小山内薫らと第二次「新思想」を創刊、「刺青」「麒麟」などを発表。「三田文学」誌上で永井荷風に激賞され、文壇的地位を確立した。
『痴人の愛』『卍(まんじ)』『春琴荘』『細雪』『少将慈滋幹の母』『鍵』など、豊麗な官能美と陰翳ある古典美の世界を展開して常に文壇の最高峰を歩みつづけ、昭和四十年七月没。この間、『細雪』により毎日出版文化賞及び朝日文化賞を、『瘋癲老人日記』で毎日芸術賞を、また、昭和二十四年には、第八回文化勲章を受けた。昭和十六年、日本芸術院会員、昭和三十九年、日本人としてはじめて全米芸術院・アメリカ文学芸術アカデミー名誉会員に選ばれた。
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