斉藤英治『王様の速読術』を読んだよ

国民的6つ子『おそ松くん』が大人になった

2015年10月5日より、地上波放送でTVアニメ『おそ松さん』が放送されています。

ご存知『おそ松くん』の作者、赤塚不二夫生誕80周年を記念しての作品だそうです。

新しいアニメでは、おそ松くんたち6つ子も大人になり、相変わらずバカでナンセンスな生活を送っています。

スマホが登場したりと、どうやら21世紀の日本のようです。

登場する他のキャラクターも、イヤミ、チビタ、デカパンなどなど、おなじみのキャラクターが勢揃いです。

私は、エスパーニャンコの登場に「わ!赤塚のネコだ!」と一瞬にして幼いころの感覚が蘇りました。

もちろん、『おそ松くん』を知らない世代の人でも楽しく見られる内容です。

また、原作マンガや、昭和白黒版・カラー版ともにTVアニメ『おそ松くん』も、6人の兄弟たちは、みな同じように、無個性に描かれていました。

一転して、今回の新シリーズ『おそ松さん』では6人の兄弟たちがみな個性的に描かれています。

と言っても、みんな同じような風貌ですから、なかなか見分けがつかないのですが、話数を追うごとに6人それぞれの見分けが出来るよう、個性を際立たせ印象づけの工夫もされています。

全員の名前を順番に呼ぶ。弟達は兄に「◯◯兄さん」と敬称で呼ぶ。

性格の違いをビジュアルでもセリフでも見せ、さらに他のキャラクターがそれを指摘するなど、繰り返し繰り返し6つ子たちの違いを演出しています。

そうすることで、表情や髪型、着ている服などだけで、つまり、イラストだけでも6人の個性が認識できるようになる仕掛けです。

そうやって、没個性だった6つ子たちがそれぞれ個性的になったことで、6人それぞれの人生があり、時間の経過があったことを感じさせます。

教養人・赤塚不二夫から夢中で学んで遊ぶ

原作者・赤塚不二夫の自伝や対談集など読みましたが、どれも教養高く、読み応えのあるものばかりでした。

特に対談集『バカは死んでもバカなのだ』は27人もの各界の教養人と赤塚が対談をしており、話があっちへこっちへと飛びながら、深くて面白く、時にエロな話が次々と展開され、それがとても可笑しくて夢中で読みました。

このような内容の濃い、しかし今すぐには役に立たない知識が詰まった本に出会ってしまうことがあります。

本に出会ってしまえば、暫くはもう虜。

他のなにをしてたって、そのことで頭がいっぱいになってしまいます。

本の中で紹介されていた作品や書籍、映画や音楽など、探したくてたまらなくなりますし、同じ著者の本や、紹介されていた人たちについて調べたくてたまりません。

固有名詞を思しきものはすべてチェックし、リストアップします。

現在はインターネットを使えば、調べごとの見当をとてもつけやすいのです。

Wikipediaでざっと人物の経歴を読み、著書一覧などあればしめたもの。

片っ端から書店、図書館、古本屋など探して回ります。

こちらも、今ではAmazonなどネット通販でも探せますし、電子書籍もあるので便利です。

このような状態を「勉強」と呼ぶのではないかと思います。

この調子で片っ端から数珠つなぎのように、次から次へとどんどん知識を深めてゆくと、こんなに能動的な勉強はありません。

しかも、相手は夢中になるほど面白いものなのです。

あるいは、このような状態を「遊び」と呼びます。

ひたすらに自分のやりたいことをやりたいままに追い求めています。究極の遊びです。

学ぶことと遊ぶことは本質的に同じです。

赤ちゃんはキャッキャと声を出して遊びながら言葉を覚えます。

ママの顔真似をして遊んでいる内に、表情を学び、コミュニケーションがを覚えます。

他者と意思の疎通が取れるようになると、それまでにも増して猛烈なスピードで学習をしてゆきます。

更に、遊びながら文字を覚えたとき、とんでもない量の知の結晶にアクセスできるようになります。

お約束・定番・ベタ「元ネタ」を知ってるほうがより面白い。

6つ子と言えば「おそ松くん」。

おでんと言えばチビ太。

シェーと言えばイヤミ。

「おフランス」と言ってもイヤミです。

これも立派な教養です。

日本人の広い世代で共有されている常識でしょう。

これらのパロディーもたくさんあります。喩えとして登場することもあるでしょう。

沙羅双樹と言えば『平家物語』。

ににんが と言えば 4。

秋の田の と言えば わが衣手。

勉強をするということは遊ぶことですから、なんでも物は知っている方が、ずっと楽しいのです。

映画やCMを見ていたって、パロディーがたくさんあります。

パロディーというのは、真似をしながら何かを表現しているのです。

赤ちゃんがママを真似ることが大好きなように、似ているもの、同じものは面白いのでしょう。

最初は大人の真似をしてるだけの赤ちゃんも、次第に「意外性」や「予想外」な事態をおかしがり、更に、赤ちゃんの方から予想外で、意外なことをし始めます。

要は「ボケ」ているのです。

そうやって、最初は真似から始まり、オリジナルの表現を身につけます。

似ているもの、同じものへの面白さと言えば、おそ松くんら同じ姿形の人間が6人もいるという、なんだかワケがわからない面白さ、おかしさと共通しているのかもしれません。

勉強=遊ぶ? 時間がないとどっちもしたくない!

大人も子供も遊ぶのが大好きです。

遊ぶことは学ぶことですから、大人も子供も勉強が大好きということになります。

反対に、勉強が嫌いだと言うなら、遊ぶのも嫌いということです。

クタクタに疲れているときや、高熱を出してしまった時、ただ「早く布団に入りたい!」の一心になります。

こんなとき、勉強したいと思いませんし、遊びたいとも思いません。

空腹や眠気、体の不調があると、勉強も遊びもそれどころではありません。

勉強のため、遊びのためには、最低限の余裕がなければいけません。

余裕がなくなってしまう一因に、時間的制限があります。

悲しいかな一日はたったの24時間です。

テキパキしようがダラダラ過ごそうが24時間です。

貴重な時間をどう使うか、何に使うかが重要です。

仕事の分量が増えるほど、たくさんの書類を読んだり書いたり、資格取得をしなければならなかったり、書籍や書類に触れるでしょう。

本を読む、文章を読むということは、何をしてもついてまわりますから、必要な情報を適格に収集してゆく必要がありそうです。

どんなに働いても貧しい国と、情報のあつまる豊かな国

斉藤英治『王様の速読術』では、多忙を極める豊かな国の王様が、隣国の貧しい国から逃げてきた若者に、本の読み方、ひいては時間の使い方、情報の扱い方を伝授します。

この若者、実は隣国から送り込まれたスパイで、隣国がなぜ富んでいるのか探りにきたのです。

しかし、王様は情報通ですから若者がスパイだと知って、国が豊かになる秘密を教えるのです。

王様がなぜ隣国が豊かで平和になることを望んでいるのか理解できなかった若者は、次第に本を読み情報を得ること、そしてそれらを咀嚼し自分のものにすることの大切さを理解し、国へ帰ります。

貧しい国では、忙しいからと、本を読む時間を持たず、寝る時間や食事する時間ももったいないと言い、働いても働いてもどんどん貧しくなっていました。

学ぶこと遊ぶことは、働くことにまで密接にリンクしているようです。

というより、遊びと仕事は遠い存在のようですが、本来はとても近いものなのです。

歌を歌いながら作業をしたり、太鼓に合わせて仕事をしたことが、今日の芸能に繋がっていると言っても良いでしょう。

日本でも、音楽に合わせ歌い踊りながら田植えをする祭りがあります。

もしかしたら、太鼓のリズムにあわせる、歌うというものは、時計がなかった時代の人たちにとっての、時間管理術だったのかもしれませんね。

また、本には構成があります。

見出しがあり、導入があり、本題があり……と、文章のお約束があるのです。

「お約束」というのは「シェーと言えばイヤミ」と同じです。

それを知っておくと、しっかり読む部分とざっと読む部分で力の強弱をつけ、それによりリズムよく読み進めてゆけます。

本を読む目的によっても、読み方は変わります。

軽く目を通すのか、丸暗記するのか、必要な部分を拾い読みするのか、文を味わうのか、キーワードを拾って読むのか……。

それぞれのニーズに合った読書スタイルが必要でしょう。

『王様の速読術』では、それら読書のコツが紹介されているのです。

どんな風に、どれくらいの時間で一冊の本を読むのかは、時間をどうやって使うのかということです。

それは24時間をどう使うかに影響します。

また、一冊の本を、どう読むか、何を読み取るかも重要です。

どんなに良い内容が書いてあっても、自分が理解できなければ意味がありません。

本を読むことに慣れておくことが、仕事を、勉強を、遊びを、豊かにすることへ繋がります。

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Information

王様の速読術――1冊30分でも必要な知識は吸収できる

  • 著者:斉藤英治
  • 発行所:ダイヤモンド社
  • 2006年5月11日

目次情報

  • はじめに
  • 第1章 ワシには30分しかないのじゃ!
  • 第2章 30分で1冊を読破――王様の速読術
  • 第3章 目的別に速読術を使いこなすコツ
  • 第4章 錬金術でアウトプットしよう
  • 第5章 王様への道
  • おわりに

著者略歴

斉藤 英治(さいとう・えいじ)

1940年、山形市生まれ。東北大学卒業。医学博士。健康英知研究所所長。日本綜合医学会常任理事を兼任。こころとからだの健康向上と能力開発の研究をライフワークとし、こころを豊かにする読書法や能率学を研究、教育にも力を入れている。
そのメソッドは、東芝、富士写真フイルム、東京電力、JR東日本など、多くの企業研修にも採用され、話題になている。著書に、『右脳と左脳が同時に目覚める超聴きトレーニング』、『上達が不思議なほど早い!右脳英語超聴きトレーニング』、『いい睡眠は、いい人生をつくる』(以上、三笠書房)、『超聴き超読みで頭の回転がみるみる良くなる!』、『べんり速読術』(日本実業出版社)、『右脳パワー強化術』(日本文芸社)、『ホワイトハウスの記憶速読術』(双葉社)など多数。

―斉藤英治『王様の速読術』(ダイヤモンド社、2006)カバー

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