『なぜ蚊は人を襲うのか』|蚊と人と病原体の攻防戦

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『なぜ蚊は人を襲うのか』挿絵イラスト

こんにちは。冬のうちに体力をつけたい あさよるです。冬は代謝が上がっているから、筋トレするにはもってこいなのよ。夏は体もバテてるから、それまでにシェイプアップしたいのです。夏の準備は冬のうちから始まっているワケですが、夏の「虫」問題もなんとかしたい。田舎に住んでるもので、窓に寄ってくる虫の対策に毎年悩まされています。ということで、今回は「蚊」。

以前、ゴキブリ退治の本を読みましたが(名著)、蚊は不快だけれども「かゆみ」以外の実害がないし殺虫剤でなんとかなるので優先度が下でした。しかし今日『なぜ蚊は人を襲うのか』を読んで、蚊の恐ろしさと、神秘と、そして「かゆみ」の重大さを知りました。蚊は怖い!

地球どこでも蚊が待っている

本書のタイトル『なぜ蚊は人を襲うのか』という問いの答えは「繁殖するため」ということは、皆さんもご存じのとおりです。動物の血をすう蚊は、産卵前のメスだけです。動物の血液をたっぷりと吸い、そのたんぱく源で卵を産みます。

そのメスの蚊にも「好み」があるようで、人の血を好むものや、動物や家畜が好きなものもいるそうです。日本の都市部に住んでいる蚊たちは、人間をエサにしていますから、散歩中の犬と一緒にいても人がターゲットにされやすいのだそうです。反対に、農村部へ行くと犬の方がよく刺されるなんてこともあるそうな。

日本の蚊は寒くなるといなくなりますが、極寒の地でも平気な蚊もいるそうです。熱と二酸化炭素を大量に吐き出す飛行機を蚊は生き物と間違えて寄ってくるそうで、飛行場の水たまりでは蚊が発生しやすく、しかもこの蚊!飛行機の車輪かなんかにくっついて、上空の極寒の環境でもへっちゃらで、遠くへ移動してしまうんだそうです。また、蚊は冬眠をして越冬もできるので、想像以上に手ごわい相手なのです。

蚊が害虫で困った存在なのは、「かゆい」という事実もさることながら、病気を媒体する恐ろしい存在であるからです。

蚊と伝染病

2014年、東京でテング熱を発症した患者が話題になりました。日本でもテング熱の患者は毎年いますが、彼らは旅行先でテング熱にかかり、気づかずに帰国し発症する例しかありませんでした。しかし、この患者は直近に旅行歴がなく、国内でテング熱に感染したのです。その後、同じ病原体に由来すると考えられる患者が兵庫県で確認され、再度話題となりました。東京で発生したテング熱が、兵庫県まで広がっていたのです。

蚊がマラリアを媒体していると知られるようになったのは1880年のことで、意外と最近。それまでは「悪い気」が伝わるなど、オカルトチックなことが信じられていました。それまでも、ボウフラが繁殖する水たまりをなくすとマラリアが減ると認識されていた地域もあったそうですが、具体的に病原体が蚊の体内から発見されたのでした。

日本でも『堤中納言物語』の「虫愛ずる姫」のお話の中で、も「蝶の鱗粉に触るとマラリアになる」と読める箇所があります。また、平清盛はマラリアで亡くなったと考えられているそうです。『源氏物語』でも高熱に見舞われる描写があったり、西郷隆盛の最期も、蚊の媒体によりフィラリア症を発症しており、逃げることができず自害に至ったと考えられています。歴史を動かす「蚊」の力。恐ろしい。

「かゆい」から逃れられる

現在でもマラリアによる死亡率は減少していますが、死亡者数は増えているそうです。感染する人の数が増えているということなんですね。

どうやら、日本で住んでいるわたしたちと、マラリアが蔓延するアフリカでは環境が違うようです。日本人は、蚊に咬まれるのを極度に嫌がり、蚊帳を張り、蚊取り線香を焚き、殺虫剤や虫よけスプレーを念入りに使います。それはただただ「刺されるとかゆい」からです。「かゆみ」という不快感から逃れるために最大限の対策をしているんですね。

蚊に刺された「かゆみ」の原因はアレルギーです。蚊の唾液をアレルゲンと認識し、かゆみを感じます。しかし、蚊に刺されまくると、蚊の唾液専門の抗体が生まれ、かゆみを感じなくなるそうです。アフリカの民家で寝ていると、1晩になんと200箇所も蚊に刺されるそうなのですが、かゆみを感じないから対処が後回しになってしまいます。

蚊は生き残るために人の血を吸い、人は生き残るためにアレルギー反応を起こして蚊から逃れます。しかし、あまりの大群で蚊に血を吸われると、かゆみを感じなくなり、蚊に血を吸われてもへっちゃらに……蚊は恐ろしいのです。

巷の都市伝説で「O型は蚊に刺されやすい」という話がありますが、これも科学的に「その通り」「いや、ちがう」と論争が絶えないそうです。もし、本当にO型が蚊に刺されやすいなら、人類の進化となんらかの関係していると考えられます。ヒトは蚊がたくさんいるアフリカを離れ、蚊のいなかった寒冷地へと移動していったのですから。

『なぜ蚊は人を襲うのか』挿絵イラスト

蚊もいろいろおりまして

蚊といっても種類がたくさんいるそうです。あさよるは「ヤブ蚊」と「イエ蚊」しか知りませんでしたが、田んぼの真ん中でブヲォォっと柱を作っているのも蚊の仲間だそうです。血を吸わないので、他の虫かと思っていました。

また「蚊に血くらいくれてやるけど、痒くするなよ」と怒っておりましたが、「かゆい」という不快感は人類の生き残り策なんですね。やはり蚊は遠ざける方法を苦心した方がよさそうです。最も有効なのは、水たまりにボウフラを沸かせないことです。正攻法です。

血吸い蚊でも、好みがあるという話は面白いですね。蚊の生態についても紹介されていて、知らないことばかりでした。蚊のメスは、たった一回だけオスと交尾すると何度も卵を産めるそうです。だからオスもチャンスが1度しかありません。また、交尾前のメスは動物の血に興味もないそうですが、交尾を1度すると俄然動物の血を欲するようになるそうです。どこのメンヘラ女子か!

すごく近くにいる生き物なのに、「蚊」のことなんにも知りませんでした。

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なぜ蚊は人を襲うのか

目次情報

はじめに

1 その蚊、危険につき
2 蚊なりのイキカタ
3 標的を発見!
4 蚊が血を吸うわけ
5 病気の運び屋として
6 蚊との戦いか、共存か

あとがき

嘉糠 洋陸(かぬか・ひろたか)

1973年山梨県に生まれる.1997年東京大学農学部獣医科卒業.2001年大阪大学大学院医学系研究科博士課程修了,博士(医学).理化学研究所,米国スタンフォード大学などを経て,2005年帯広畜産大学原虫病研究センター教授.2011年から東京慈恵会医科大学熱帯医学講座教授.2014年から同大学衛生動物学研究センター長を兼任.専門は,衛生動物学,寄生虫学.

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