『とんでもなく役に立つ数学』を読んだよ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

万物は調和でできている?秘密結社ピタゴラス教団

古代ギリシア時代、ピタゴラス教団という集団がありました。ピタゴラスとはもちろん「ピタゴラスの定理」のピタゴラスです。
ピタゴラス学派とも呼ばれる秘密結社です。

ピタゴラスは現在でも、数学者として、物理学者として、哲学者として知られています。
そして、音楽の世界でも偉業が残っており、ドレミファソラシドと音階を発見したのはピタゴラスだと言われています。現在の西洋式の音階は、それに改良が加えられたものです。

ピタゴラス教団は、万物は調和や均整が取れたものだとの思想を持っており、数学を始め、物理や哲学などの研究がなされていました。それらは神聖なものとされ、外部へは極秘事項でした。

大ベストセラー『塵劫記』が起こした江戸時代の和算ブーム

江戸時代の日本では、士農工商と身分制の社会でした。農民に生まれれば農民として、商人として生まれれば商人として一生を過ごします。

「読み書きそろばん」という言葉があります。
身分制のもとでは、身分や職業により、身につけても良い学力というものが決められており、それ以上の学力は必要ないとされていました。足し算引き算は必要だけれども割り算はしなくてよろしいとか、仕事に必要な書類さえ読めればよいとか、身につけても良い学力が細かく規定されていました。
身分相応に「読み書きそろばん“以上はしてはならない”」のです。

日本で発達した数学は「和算」と呼ばれており、江戸時代に大きく発展しました。
先に述べた通り身分制度により学力が制限されていたため、「和算」は遊びやゲーム、パズルとして親しまれ、大ブームを巻き起こします。

ブームの火付け役は、寛永4年(1627年)に出版された『塵劫記』という一冊の和算の手引書です。
『塵劫記』は江戸時代の大ベストセラーで、明治まで出版され続け、ゆうに200年以上売れ続けていたのです。さらに『◯◯塵劫記』など、『塵劫記』と名前のついた書籍もたくさん出版されていたようです。

『塵劫記』の巻末には力試しの問題が収録されていましたが、その答えは掲載されていませんでした。そこで、我先にと答えを出そうとしたり、人と違う、誰も思いつかなかった方法で答えにたどり着こうとしたりと、様々な考え方、導き方が登場しました。
数学愛好者は全国におり、鎖国政策が取られていた当時、西洋の数学にも負けず劣らずの大発展をしていたそうなのです。
もちろん、「遊び」ですから身分の差も関係ありません。

参考として、川本 亨二『江戸の数学文化』がよくまとまっています。

数学の持つイメージに「答えが決まっている」「答えが一つしかない」というものがあるように思います。「答えが決まっている」から数学が好きという人もいれば、「答えが一つしかない」から数学が嫌いだという人もいますね。

しかし、江戸時代の人々を熱狂させたのは、答えが一つではないこと、答えを導き出す方法も一つではないことによってでした。みんなで競い合って、人と違う、誰も考えついていない、自分だけの回答を模索したのです。
現在の私たちが持つ数学のイメージとは全然違います。

渋滞に避難経路にメッカ巡礼。数学は人を動かす

西成活裕『とんでもなく役に立つ数学』では、身の回りで起こる問題や障害を数学で解決する考え方、扱い方の例を紹介されています。
著書の西成活裕さんは『渋滞学』(新潮選書)や『「渋滞」の先頭は何をしているのか』(宝島新書)という著書もあり、あの忌々しき道路での渋滞を数学により解決しようと試みられています。

渋滞しているとはどういう状態なのか、渋滞していないときはどうなっているのか、と分析し、簡略化し、抽象化してゆき、解決方法を探る。どうすればスムーズに全部が移動できるのかと考えることは渋滞だけでなく、避難経路の確保の仕方や、混雑なく人をさばく方法など、どんどん応用して考えてゆけます。

数学とは、とても身近で、生活に密着したものなのです。

さらに渋滞研究から、メッカ巡礼で起こる事故の防止まで研究の幅は広がります。
メッカには一つの時期に300万人もの人が集まり、そこでは事故が耐えません。どうすれば事故を減らせるのか、どうすれば人をスムーズに巡礼させ、そこを去らせるのか。

数学は人を、大衆を動かせる力があるのです。
これは時に、権力者にとって大変な脅威にもなりうるのです。

だからこそ、ピタゴラス教団ではそれを秘密にし、江戸幕府はそれを制限したのでしょう。

Information

とんでもなく役に立つ数学

  • 著者:西成活裕
  • 発行所:株式会社朝日出版社
  • 2011年3月20日発行

目次情報

  • はじめに
  • 1章 いつも胸ポケットに、難問を
  • 2章 数式から呼吸が聞こえる
  • 3章 ループを回して、リアルな世界へ
  • 4章 社会の大問題に立ち会う
  • おわりに
  • 補講メモ
  • 謝辞

著者略歴

西成活裕(にしなり・かつひろ)

1697年生まれ。東京大学先端科学技術研究センター教授。
1995年、東京大学工学系研究科航空宇宙工学専攻博士課程修了後、ドイツのケルン大学理論物理学研究所などを経て現在に至る。
専門は数理物理学、渋滞学。
著書の『渋滞学』(新潮選書)で講談社科学出版賞、日系BP・BizTech図書賞を受賞。
その他の著書に『無駄学』(新潮選書)、『「渋滞」の先頭は何をしているのか』(宝島新書)、『シゴトの渋滞、解消します!』(朝日新聞出版社)などがある。
趣味はオペラ鑑賞。自信でもアリアを歌う。
西成活裕ホームページ http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/tknishi/

―西成活裕『とんでもなく役に立つ数学』(朝日出版社、2011)p.271

SNSでもご購読できます。

スポンサードリンク


コメント

コメントを残す

*