『勉強法が変わる本』|脱・暗記主義!点が良ければそれでいい?

こんにちは。あさよるです。5月末から用事が重なっていて、なんだかヘトヘトなまま月曜を迎えています。疲れているときは時間があればゴロゴロと寝っ転がって本を読んでいるので、読書ははかどっているんですけどね。

なるべく自習の習慣を途切れさせまいと踏ん張っているのですが、疲れにかまけてサボっているので、気合を入れようと『勉強法が変わる本』を手に取りました。著者の市川申一さんは教育に関する研究をなさっている方で、本書も高校生へ向けた勉強法を指南するものです。

高校生諸君に語り掛けるような文体で、点取りに勤しむのではなく、知識を身につけ、「考える」ための力を身につけるよう指導されています。良い本だと思います♪

高校生向け!勉強法

本書『勉強法が変わる本』は、高校生向けの勉強法を指南する内容です。単に、教科書を〈丸暗記する〉学習ではなく、〈理解する〉〈展開できる〉ように学習する方が効果的だし効率的であると説かれています。本書では、学習法を5つのテーマに分けて紹介されています。

  1. 学習観を見直す
  2. 記憶する
  3. 理解する
  4. 問題を解く
  5. 文章を書く

それぞれのまとめをちょろっと紹介してきます(^^)>

  • 学習観を見直す

これまでの学習法に問題があるかもしれないから、この機会に見直してみましょう。たとえば、考えるときは紙とペンを用意して、図に書きながら考えるクセをつけましょう。意外と、図解せず頭の中で考えて「分からない」と唸ったり、思い違いをしていることもありあます。また、「結果主義」「暗記主義」「物量主義」の学習観はやめましょう。暗記より理解、結果より課程、量より身についた内容へと、勉強法を変えることで、勉強がはかどるようになるでしょう。

  • 記憶する

記憶法では、一気にドカッとやるのではなく、毎日少しずつ反復して勉強するほうが効果的です。そのときも、ただ漫然とやるのではなく、記憶に定着しているものを省き、記憶できていない部分をあぶり出して、集中的に記憶してゆきましょう。また、単に暗記するのは難しいので、他の情報と関連付けて記憶させましょう。だから、物事の原因や理由などを知って、それらを関連づける力が必要です。

  • 理解する

理解を深めるためには、他人に説明できるか確認しましょう。わかりやすい説明には「定義」と「具体例」の両方を説明する力が必要です。また、教科書や先生の説明は、一部解説が省かれていたり、それぞれの解釈の違いで説明が変わることもあります。自分でも「なぜそうなるのか」を理解しておきましょう。

  • 問題を解く

問題解決では、

数学や理科などの問題解決では,問題を理解する課程と,解決方法を探索する過程とがある.(p.146)

と紹介されています。問題のパターンを知っておくことと、新たな問題に知っている問題を持ち込んで考える方法があります。問題を解くことばかりするのではなく、まずは「理解する」ことに努めましょう。教科書の問題には解がありますが、実際の世界には答えがなかったりします。勉強では、答えを当てることではなく、解を探し、失敗から経験を得て、経験を積むことが大切です。

  • 文章を書く

小論文を書くときには,課題文をきっかけにして,自分の問題としてひきつけて考える姿勢が必要だ.(p.191)

とまとめられています。考えを深め、練り上げることが評価につながるし、自分の力にもなります。論説を読むときは「読解メモ」と、思いついたことを「連想メモ」、そして内容を整理しながら「構成メモ」をとりましょう。文章を書くことで「考える」ことができるのです。

勉強法を勉強する高校生へ

青少年向けの本には2種類あります。それは「子どもが読む本」と「親や保護者が読む本」です。本書『勉強法が変わる本』は完全に前者。高校生本人が能動的に読むことが前提となっています。親や教師が本書を読んだところで、子どもの勉強への取り組みは変わらないでしょう。

なもんで、日ごろから読書をする習慣があって、勉強の効率を工夫したいと考えている高校生が対象の内容です。読書習慣がない子どもにとっては、本書は結構読むのが難しいのではないかと思います。今、巷にあふれている文書って、「誰でも読める」ような易しい文体のもが多いですよね。本書は2000年出版の本なのですが、章立てされているから、文章を読み解けないといけません。

といっても、〈賢明な読者諸君〉に語り掛けるような文体で、きちんと「岩波ジュニア新書感」があって好きです。

試行錯誤するより指南書を

あさよるは高校生の頃、生産性のない生徒だったもんで、ただがむしゃらに与えられた課題をこなすだけで、「勉強法を勉強する」という発想がありませんでした。よって、本書のような、学習の指南書みたいなものがこの世に存在することもしらない10代でした(;’∀’)

今になって思うのは、自分一人で四苦八苦するのも大事だけど、同時にどんどん先輩たちの〈勉強法〉もたくさんインストールして、試行錯誤の質をどんどん上げてゆくのが良いよね。

文章を書くことは、考えること

第5章の「文章を書くこと」では、文章を書く意味が紹介されています。

文章は頭の中ですでにあることの写しではない.書いてみようとすること,書いたものを自分で読み直すことを通じて考えが深まるのである.そのときに,どのように考えを進めるかという指針と,人間がついどのような考えに流されやすいかという心理的な傾向を知っておくことは,素朴な意見から脱するための助けになるだろう.

p.192

「文章を書く」とは、単に頭の中をアウトプットすることではないというのです。書いて読み直すことで、自分の考えを深めていけるというのですね。

以前、人間は〈言葉〉を発することで考えることができると聞いたことがあります。感覚的には「頭の中で考えたことを、言葉にして発している」ような感じがしますよね。しかし、実際には逆。人間は、言葉で発したことを記憶し、それを反芻することができる、というのです。この反芻が「考える」ということだそうです。よく、ポジティブな言葉使いなさいとか、〈言霊〉の考え方なんかがありますが、これは本質をついたものらしいのです。たぶん「書く」という行為も、自分の言葉を反芻することで「考える」課程の一つになり得るのかも。

あさよるも、なんとなく読書の記録にブログを始めましたが、当初の想定以上に有意義な活動なのかもしれません(^^♪

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目次情報

はじめに

1 学習観を見直す

1-1 勉強法の問題点を探る

1平方メートルは何平方センチメートルか/言葉の定義にたちかえって考える/手を動かしながら,頭を使う

1-2 学習のしかたに目を向ける

失敗から学習のしかたそのものを見直す/「やるっきゃない」と誤解されている御三家――漢字,計算,英単語

1-3 勉強法の背後にある学習観

学問に王道はないか?/学習相談で出会ういくつかの学習観/学習は「量と質」ということ

本省のまとめ

2 記憶する

2-1 英単語の学習の工夫から

あやふやな単語に時間を配分する――苦手単語集中法/単語のイメージと使い方を知る――例文利用法/単語どうしの関係をつかむ――関連づけ法/構成要素から単語の理解する――構成要素法

2-2 記憶理論から見た勉強法

反復と賞罰を重視する考え方――行動主義の立場/反復するにも工夫は必要/知識を使って情報を関連づける――認知主義の立場から/知識を構造化する学習

2-3 記憶のモデルを考える

短期記憶から長期記憶へ――記憶の貯蔵庫モデル/処理の深さが記憶を決める――処理水準説

本章のまとめ

3 理解する

3-1 用語が理解できないのはなぜか

日常モードと学問モードの言語の修得/定義と具体例をセットで学ぶ/人に説明できるかどうかで自分の地下度をチェックする

3-2 図,公式,手続きの理解のために

知覚像と写真像の違い/公式をどう見るか/手続きへの慣れと意味の理解のバランス

3-3 文章を理解する

文章理解には知識と推論が必要/情報をとりこむ枠組み/英文解釈でも知識と文脈を使って推論する/英文解釈における推論の具体例

本章のまとめ

4 問題を解く

4-1 問題を解くときの心の中

公式を暗記するだけでは,もちろん解けるようにならない/ひとまず例題にチャレンジしてみよう/問題解決に必要な知識と技能

4-2 「数学=暗記」説はほんとうか

「数学は,解放の暗記だ」という説/正統派は「自力解決」を主張して反撃/解放暗記派と自力解決派の目標の違い/認知心理学から見た折り合いのつけ方

4-3 見落とされがちな勉強のしかた

問題を解いていくだけでは学力はつかない/問題を解く前に――解説と例題を見る/問題を解いた後に――教訓を引き出す

4-4 広い意味での問題解決

「問題解決」とはどう定義されるか/学校での勉強と世の中いろいろな問題/学校教育での新しい動き――学力観の見直しと総合的学習

本章のまとめ

5 文章を書く

5-1 小論文を書くときの姿勢

ものを書く立場に身を置いてみよう/比較的自由な小論文でウォーミングアップ/素朴な考えをどう深め,広げていくか

5-2 「読んでから書く」という本格的な小論文

読んでから書くことのありがたさとむずかしさ/論旨をつかむにはメモに書き出してみる/自分で思いついたことも,メモにしながら考える/下書きを書く,そして,他者の目で読む

5-3 文章作成の課程とスキル

文章は頭の中の写しではない/文章を書くときの手作業と頭の中の作業

本章のまとめ

おわりに

索引

市川 伸一(いちかわ・しんいち)

一九五三年東京に生まれる。東京大学文学部卒業。現在、東京大学大学院教育学研究科教授。文学博士。学習、推論、理解などについて、教育実践と関わりながら研究している。著書に『学習と教育の心理学』(岩波書店)、『心理学から学習をみなおす』(岩波高校生セミナー)、『考えることの科学』(中公新書)、『開かれた学びへの出発――21世紀の学校の役割』(金子書房)など多数。

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