こんにちは。あさよるです。毎日ブログを更新する程度には日々ネット漬けで、新聞もあまり読まないし、テレビは全く見なくなって久しいです。しかし災害時や緊急時は、ネットニュースの速報性はとても高いですが「まとまった情報を俯瞰する」ことには向いていないようにも思います。また、SNSを使って情報がシェアされますが、なんとなく有益そうな情報に感じるけれども、出どころ不明の情報だったり、どこかから転載してきたと思しき情報も散見されます。出展元がわからないと、その情報をどこまで信頼していいのか悩みます。また、「以前はこうだった」と過去の経験を語る人も多くいます。もちろん、他人の経験は重要ですが、緊急時にそれぞれの人が直面する問題は全く違っているだろうし、平和で安全な場所でいる人が、過去の思い出話を拡散することが、どれくらい今困っている人の役に立つのかなあと感じます。
ネットの情報は趣味や余暇の楽しみには最適です。が、人の命がかかっているような状況では、やはり新聞社やテレビ局の情報に耳を傾けてしまいます。災害時でも、NHKや政府のTwitterアカウントが拡散されていますね。
デマや誤認などの玉石混交……というか、石ばっかりの情報の中から、有益な「何か」を読み取れるリテラシーの高い人にとってネットはとても使い勝手の良いものでしょうが、圧倒的多数の人にとっては、ネット情報を扱うのは難しすぎるのではないか……と、今回『その情報、本当ですか?』を読んで改めて思いました。
テレビや新聞は「誰かがフィルタリングした情報」であることが大事で、意味のあることなのかもしれません。
テレビニュースのつくり方
『その情報、本当ですか?』の著者・塚田祐之さんは1975年にNHKに入社し、報道番組の企画・取材・制作に携わり、専務理事まで務められた方です。1985年の日航ジャンボ機墜落事故や、1995年の阪神大震災、2004年の新潟中越地震、2011年の東日本大震災と、日本の大災害や大事故もテレビマンとして経験されました。
2011年の東日本大震災では、TwitterをはじめSNSで安否情報や被害情報が拡散され、SNSが注目されました。現代ではアメリカのトランプ大統領も、Twitterを使って直接全世界に向けて生のメッセージを拡散しています。ネット情報は迅速でかつ誰もが発信できることが良い点でもあり、悪い点でもあります。ネットニュースには、フェイクニュースが少なくない量混じっています。「フェイクニュース」とは本書では「事実でない、にせのニュース」全般を指して呼ばれており、発信者の意図は問わず、勘違いや間違いも含みます。
1995年にMicrosoftのWindows95がリリースされた頃から、日本国内の一般家庭にも徐々にインターネットが普及してゆきます。1996年にはYahoo!JAPANが登場し、ヤフーニュースが始まりました。当時は、通信社や新聞社から安い価格で記事を買って配信されていたそうです。そして2003年、ライブドアは新聞社の書いた記事と、ブロガーが書いた記事を同じように並べ、ランキング形式にして表示しました。ブロガーの中にも専門家はいますが、裏付けの薄い記事も閲覧数が多ければランキング入りします。数多くの「ニュースサイト」が登場しました。このころから、テレビや新聞の報道と、ネットの情報のパワーバランスが変わり始めたのかもしれません。
著者の塚田祐之さんは、テレビ報道の現場でどのようにニュースが作られるのかを紹介しながら、ネットニュースとの違いを強調されています。粘り強く取材を重ねたり、実際に現場に赴いたり、時間と手間をかけてニュースが作られているのがわかります。また、冷戦時代、「鉄のカーテン」で仕切られたソ連で大やけどを負った少年を北海道の病院が受け入れた様子を取材したり、北方領土問題をめぐり当時のロシアのエリツィン大統領と中継で結び、元北方領土島民がインタビューをする企画を実現しました。こんな企画はテレビならではで、ネットのニュースサイトでは難しそうな企画です。
視聴率主義とページビュー主義
テレビは放送内容よりも視聴率重視の傾向があるなんて言われます。それは民法だけでなく、NHKも視聴率を気にしているようです。ちなみにNHKで2017年一番視聴率が良かった番組は、朝の連ドラ『わろてんか』だったそうです。
じゃあ、テレビは視聴率主義だから、テレビ番組も視聴率を取れる内容に偏っていて、見る価値ないのか? というと、なんとも言えません。それは、ネットの情報もまた、ページビュー数稼ぎのために書かれた記事が大量にあるからです。ネットの場合、記事に添付された広告の表示回数によって収益が発生したり、または記事に張られたハイパーリンクを辿ってショッピングサイトで買い物されると、売り上げの数パーセントを仲介手数料として受け取れる仕組みなどが存在します。ページビュー数を稼ぐためのネット記事が溢れかえっており、正直、なかなか裏付けのある情報にたどり着けなかったりもします。このページビュー数稼ぎは、テレビの視聴率主義とは比べものにならないくらいでしょう。
テレビの方がより〈マシ〉?
本書『その情報、本当ですか?』を読む限り、ネットの出どころ不明、執筆者不明の記事や情報に比べれば、テレビの情報の方が「マシ」といったところでしょうか。今現在、テレビニュースでもSNSで拡散された情報や写真・映像が報道されることが普通になりました。ネット発の情報ですが、「テレビ局が選んだ情報である」という点で、フィルタリングが一度は成されています。ネット上で拡散される情報から、取捨選択して必要な情報だけを抜き出すには「ネットリテラシー」が必要です。テレビが視聴者の代わりに情報を選んでくれていると考えると、テレビでネット発の情報が取り上げられる意味はあるのかもしれません(あさよる個人的には、報道が素人のスクープをそのまま放送してどうするんだと思ったりもする)。
あさよる家では新聞を取っているので、一応毎日、新聞の一面はザッと読んで、紙面の見出しくらいも目を通します。前日の早朝のニュースなんかだと、すでにネット上でひとしきり話題になった後なので、なんだか遠い昔のことのようで「ああ、このニュース昨日だったのかあ」と驚くこともあります。あさよる的には「速報はネット」「まとまった記事は新聞」って感じなので、テレビを情報源として使うことがほぼなくなりました(;’∀’)>
まあ、「ネットの情報より、テレビの方がまだマシ」というのは、納得します。緊急時、SNSではデマの拡散が毎回取り沙汰されますし、「拡散すべきことと、拡散すべきでないこと」の判断を個人が完璧にし続けるのは難しいから、多くの人にとってテレビ報道は必要なのかもしれません。
“TVer”ってサイトを知った
今回『その情報、本当ですか?』を読んで初めて知ったのは、「TVer」というサイトの存在です。「TVer(ティーバー)」は民放各局のテレビ番組が見れるポータルサイトです。直近一週間分のテレビ放送が見れるそうなので、radikoのテレビ版みたいに考えても良いのでしょうか。さっそく「情熱大陸」を見てみました。
- 外部リンク:民放公式テレビポータル「TVer(ティーバー)」
部屋のテレビがもう古くて寿命みたいなので、捨てようか悩んでいましたが、ネットでテレビ番組が見れるならテレビ本体は手放してもよさそうだなあ。あさよるは基本ラジオっ子なので、ラジオがあれば十分だし。
今のテレビを買った経緯も、2011年の東日本大震災の時、単身世帯でテレビを持っておらず、ネットニュースはわけがわからないし、SNSではデマが飛び交い、ラジオだけでは状況が把握できなかったので、「映像の情報は最低限必要かも」と思って、テレビを買いました。しかし、今では緊急時もネットでライブ配信されてるし、マテリアルとしてのテレビはなくてもいいかも。
こんなことを言うと、すごく皮肉を言っているような感じですが、報道が、新聞、ラジオ、テレビ、誌面など、媒体によって区切られていた時代から、現代はみんな同じインターネットという媒体に集約され、テレビ局や新聞社の取材や企画、編集、スクープなど、情報の質や内容によって、他のものと分けられ始めていんじゃないでしょうか。
あさよるも好きなユーチューバーさんの動画を見るのは好きですが、テレビを見るとやっぱりテレビ番組のクオリティはすごいと思うし、ネットニュースよりも新聞記事の方がソースとして良いと感じます。今はメディアが再編成される過渡期なのかなあなんて思いました。
「テレビだから信じる」から「テレビ局が取材して裏取りをした情報だから、ネットニュースより信頼できる」へと、利用者の意識が上がってゆくことが、本書『その情報、本当ですか?』で著者が読者へ求めていることだと思います。
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その情報,本当ですか?――ネット時代のニュースの読み解き方
目次情報
はじめに
1 相次ぐ「フェイクニュース」の出現――何が本当の情報か
「フェイクニュース」とは
「フェイクニュース」がきっかけで発砲事件まで
「フェイクニュース」をどう見分けるか
「ポスト・トゥルース」
マスメディアとの対立
分断されるアメリカの世論
なぜ“本当の事実”を知らなければならないか2 事実をどう集め、伝えるか――私がテレビでめざしたこと
テレビをめざす動機
現地に行って実際に体感する
ネタ探しの日々
初めての番組制作
初めての災害報道現場
取材する側と取材される側
「徳島ラジオ商殺し」えん罪事件の取材3 それはわずか数行の情報から始まった――緊急報道の舞台裏
緊急報道とは
1985年8月12日
1995年1月17日
2004年10月23日
2011年3月11日4 テレビとネット、どう見られているか
若者のテレビ離れとネット利用の急増
手放せないスマートフォン
メディアの情報信頼度は5 インターネット情報はどう生み出されているか
ニュースとネット情報
ネット情報は、誰が内容に責任を持っているか
“ページビューを稼げ”、ネットビジネスの特性
“収益優先”、コストをかけずに情報を量産
ネット炎上とネットいじめ6 テレビだからできること――大きな時代の変わり目に
閉ざされた国境を越えたやけどの少年
北方領土の素顔
ロシア大統領と根室の市民、直接対話
「昭和」から「平成」へ
平成の両陛下
皇太子さま雅子さま、結婚パレード中継7 多様な意見をどう生かすか――テレビと政治の現実
「コクタイ」とは
日曜日の朝、政治が動く
政治家と政治の現実
公平・公正な番組とは8 ネット時代、ニュースや情報をどう読み解くか
変革を迫られいるテレビ
ネット情報、新たな模索
ニュース、情報を読み解く3か条おわりに
塚田 祐之(つかだ・ひろゆき)
1952年埼玉県生まれ.早稲田大学政治経済学部卒業.1975年日本放送協会(NHK)に番組ディレクターとして入局.報道局.札幌報道局で主にニュース・報道番組の企画,取材,制作に携わる.2002年編集主幹.2005年広報局長.2007年経営計画局長.20104年から理事,専務理事を務め2016年退任.
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