【書評/レビュー】宮台真司『14歳からの社会学  これからの社会を生きる君に』

〈自由〉なことって〈不自由〉なこと?

自分の生き方、社会の生き方を考えてみる!

社会学の入門編として読んでみた!

「社会学」って一体なんだろう?と以前から気になっていました。

そもそも、どんな学問かすら知りません(^_^;)

社会学の入門本を探していたのですが見当たらず、「14歳の」とある『14歳からの社会学』を手に取りました。

『14歳からの社会学』で知ったこと

戦後日本は、焼け野原の中からスタートしました。

みんなで一所懸命働き、豊かになってゆくごとに、家庭に冷蔵庫が登場し、炊飯器がやってきて、テレビが投入され、物質的にも満たされてゆきました。

みんなが「豊かになろう」と同じ目標を持って頑張っていた時代は、個人の「幸せ」の形も共有されていました。

白馬の王子様の到来を待っていた少女も、年ごろになればお嫁にゆきます。多少タイプじゃなくったって、結婚し、子供を産んで家庭を持ち、家を買い、物質的にも徐々に恵まれてゆくことが、「幸せ」だと共有できました。

しかし、時代は変わります。

個人が「自分の幸せ」を探し始めた

一通り家庭内に物が行きわたると、次はその商品のデザインや、こだわり部分が大切になります。自分の個性や、感性が反映される物をみんなが求め始めました。

「自分」という個性に注目すると、「みんな」という社会の価値観とは隔たってゆきます。

自分なりの持ち物、自分に合ったテレビ、自分に似合う洋服が大切になり、「自分にとっての幸せ」を個人が模索するようになりました。

恋愛や、家族のかたちにも、バリエーションが生まれました。かつてのように、「みんなの幸せ」が「自分の幸せ」ではなくなったのです。

個人の〈自由〉を手に入れると〈不自由〉になった

「みんなの幸せ」がなくなってしまったので、今日では「自分の幸せ」を自分で探さなければならなくなりました。

自ら選び検討できる人にとっては、〈自由〉な時代です。しかし、自分で選ぶ力や知識のない人にとっては〈不自由〉な時代とも言えます。

本書のタイトルにもある「14歳」の中学生たちは、その幼さゆえに〈不自由〉な社会であることでしょう。いいえ、例え大人になったとて、社会の構造を理解し、歴史を知り未来を予想できる大人なんて、ほんの少数派です。

現在、みんなは〈自由〉にモノゴトを選択できる時代になりました。しかし、そのせいで〈不自由〉になってしまいました。

〈自由〉って……一体なんだ?

「自分の幸せを」自分で決めないといけない時代だからこそ、社会についてや、自由や権利についても、よく知っておかねばなりません。

現在は、「知らなかった」という言い訳も通用しない雰囲気すらあります。「自己責任」というヤツですね。

「自由には責任がつきものだ」とも言いますが、著者・宮台真司さんは、自己責任の論調にも触れつつ、そもそも〈自由〉とはどういう状態を指すのでしょうか。「第7章 〈自由〉への挑戦」にて丁寧に解説されていました。

今の〈自由〉は将来の〈不自由〉かもしれない

また、今、〈自由〉に感じることであっても、300年後の時代には〈不自由〉なことかもしれません。反対に、今の私たちから見れば〈不自由〉に見えることだって、昔は〈自由〉だと感じていたこともあります。

「幸せ」とか〈自由〉とか、普遍的なことではありません。その時代その次代の「社会」によって、「幸せ」や〈自由〉が変わるのです。社会が「幸せ」や〈自由〉を決めている、と言ってもいいかもしれません。

あれ、おかしいですよね。

みんなが望む「自分の幸せ」

日本人は戦後、豊かになることで、「みんなの幸せ」から「自分の幸せ」へとシフトしてきたはずなのに。「自分の幸せ」もまた、社会が望んでいる幸せであるということです。

ですから、遠くない未来では、また幸せの形が変化していると考えられます。

SF小説が社会学の入口になる?

宮台真司さんは、SF作品に触れることで、社会学を身近に感じようと提唱しています。高度に発達した社会を舞台に、そこで起こる事件や出来事を描き出すSF作品は、未来の社会を考える足がかりになります。

あるいは、安部公房の『砂の女』では、あり地獄のような砂の穴の中に落ちた主人公は、そこから脱出しようと挑戦しますが、次第に無理だと諦め、そこに住んでいる女性と共に生き始めます。状況が変われば、「幸せ」の形が変わってしまうのです。

社会学や哲学、歴史の勉強をするのは面倒くさいことです。しかし今、面倒くさいからやーめた!とラクをしても、近い将来はやっぱり「自分探し」や「幸せ探し」を始めなければならないでしょう。

ちょこっとだけ、著者のエッセンスに触れておいても良いでしょう。

14歳には難しい!?とりあえず通読がオススメ

タイトルに「14歳からの~」とありますが、14歳には、この本は難しいのではないかなぁと思いました。前提となっている知識や用語を、事前知識としてある程度仕入れておく必要があるでしょう。

親御さんや先生、子供たちと関わる仕事をしている大人が手に取ってみても良いでしょう。

もちろん、14歳だってチャレンジし甲斐のある内容です。文章自体は平易で読みやすいので、とりあえず最後まで通読してみては?

関連記事

14歳からの社会学 ―これからの社会を生きる君に

  • 宮台真司
  • 世界文化社
  • 2008/11/11

目次情報

まえがき これからの社会を生きる君に

1 〈自分〉と〈他人〉
「みんな仲よし」じゃ生きられない

2 〈社会〉と〈ルール〉
「決まりごと」ってなんであるんだ?

3 〈こころ〉と〈からだ〉
「恋愛」と「性」について考えよう

4 〈理想〉と〈現実〉
君が将来就く「仕事」と「生活」について

5 〈本物〉と〈ニセ物〉
「本物」と「ニセ物」を見わける力をつける

6 〈生〉と〈死〉
「死」ってどういうこと?「生きる」って?

7 〈自由〉への挑戦
本当の「自由」は手に入るか?

8 BOOK&MOVIEガイド
SF作品を「社会学」する

あとがき いま〈世界〉にたたずんでいるかもしれない君に

用語集 この本をより深く読むためのノート

宮台 真司(みやだい・しんじ)

1959年仙台市生まれ。東京大学大学院博士課程修了。
社会学博士。首都大学東京教授。社会システム理論専攻。
著書に『権力の予期理論』『終わりなき日常を生きろ』『世紀末の作法』『まぼろしの郊外』『援交から天皇へ』など。

コメント

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