カップ麺、iPod、新幹線、回転寿司、etc…
イノベーション前のこと、思い出せますか?
イノベーションって何だ?ぴったりのタイトル
「イノベーション」ってよく聞く言葉ですが、正直どういう意味なのかフワッとしか知りません
「リノベーションと違うの?」とか、他の言葉ともごちゃごちゃ。
『先生、イノベーションって何ですか?』というタイトルを見つけて、「これだ!」と思いました。
伊丹敬之先生のイノベーション勉強会
著者の伊丹敬之さんが、イノベーション勉強会で質疑応答しながら授業を進める形式で、「イノベーション」が学べます。
勉強会の参加者たちからも、「イノベーションって何?」って初歩的な質問がたくさん飛び出します。これからイノベーションについて知りたい読者には、よい質問者です。
伊丹先生も、平易な言葉で、具体的な例を出しながらイノベーションについて、何度も何度も繰り返し、だんだんと深く教えてくれます。質問を受けてからの話の持って行き方も、すごく分かりやすく納得!
「へぇ~」っと聞き入っている間に、いつの間にか深い込み入った話へ入り込んでいる。
入門書でありながら、イノベーションの良い面/悪い面や、自分の立場によって評価が変わることなど、深く知ることができた。
それって何?イノベーション前のモノがわからない(-_-;)
どんどん話が進んでゆくものだから、途中「それってどういうこと?」「これはなんだ?」と躓いてしまうところもあった。
例えば、繊維機械が日本のイノベーションのバックボーンになったとあるが、「繊維機械」と聞いてピンと来ない人には、なかなか難しい。日本で繊維産業が活発だったのは、もうかなり前の話。
スマホのイノベーションの例として、ポケベルを持ちだされても、ポケベルって知らない世代には読みにくいものかもしれません(苦笑)
イノベーションで世界が一変する
イノベーション前のものが分からないというのは、まさに「イノベーション」そのものです。世界を動かす全く新しい価値や技術が登場すると、それ以前のものはなくなってしまいます。
我々は、写真のなかった時代を想像できません。電気のなかった時代を想像できません。すでに、携帯電話のなかった時代を知らない世代も増えてきています。イノベーションって、世界そのものを変えてしまうからこそ、それ以前のものが分からなくなってしまうんです。
例えばカップヌードル。働き方、生き方を変えた
例えばカップヌードル。チキンラーメンが発明した日清は、のちにカップ付きでお湯を注ぐだけのカップヌードルを発明します。カップ麺は食生活や働き方まで変えました。
イノベーションって、なにも一つの大発明のことを言うのではなく、それ以前からの技術の積み重ねが、突如化学反応を起こすように開花します。
例えばiPod。音楽を「買う」という概念を変えた
iPhone の登場の引き金になった iPod も、先にSONYのウォークマンという存在がありました。しかし、SONYはデジタル音楽配信ができなかった。iPodは、iTunes というデジタル音楽配信サービスと合わさったからこそイノベーションなのです。
iPod 以降、世界の人々の音楽ライフが大きく変わりました。日本でもスマートフォンが普及した現在、音楽をデジタル配信で購入することは一般的になりました。「音楽」を買うといった時の概念が変わってしまったのです。
イノベーションの歴史は、人類の歴史
イノベーションの具体的な例をたくさん見ていると、これは人類の歴史そのものなんだと気づきます。
大昔から、世界中のあちこちで小さな発明があり、それが普及し、他の文化と混ざり合い、新たな発見が生まれ……。同じことを何度も何度も数えきれない発明・発見がありました。そして、世界を変える「イノベーション」が時折起こり、世界が一変します。再び、発明・発見が繰り返えされ、イノベーションが起きる。
人類はなんと、気の遠くなるような積み重ねをし続けてきたんでしょう!
イノベーションされる産業、消えてゆく産業
「イノベーション」って言っても、どうせ自分に関係がないなんて思っていませんか?いえいえ違います。
自分の身の置いている業界が、今後イノベーションを興し、世界を次のステージへと導くかもしれません。反対に、イノベーションにより、なくなってゆく業界や産業もあります。あなたの携わる仕事が、将来なくなるかもしれません。
世界は変化し続けます。それを止めることはできません。
しかし、変化する仕組みを知ることができます。イノベーションにより、何が起こるのか知ることは、決して個人にとっても無意味ではありません。
また、人類の歴史を知ることって、未来を考えることに役立ちます。たぶん、近々起こるイノベーションをいくつか予想することは可能です。
そのためにはまず、イノベーションって何ですか?そう先生に尋ねてみましょう。
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先生、イノベーションって何ですか?
目次情報
まえがき
第1章 私たちはイノベーションの効果に囲まれている
日本語ワープロと宅急便は日本人の生活を変えた
アレもコレも、私たちの周りにはイノベーションだらけ
綿の普及の背後に、北前船のイノベーション
偶然がイノベーションにつながった電子レンジ
伊丹のひとり言第2章 社会が動いてこそ、イノベーション
和食のイノベーション力?
筋のいい技術、市場への出口、そして社会が動く、という三段階
社会が動くためには、臨界点を超える必要あり
途中までいったのに、でも残念、だったiモード
iPhoneは社会を動かした
伊丹のひとり言第3章 寿司はなぜ回るようになったか
回転寿司というイノベーションの影に、繊維産業
オートバイも自動車も、繊維機械が生んだ産業?
次々と工夫が積み重なり、イノベーションになる
マグロ解体ショーはなぜ始まった?
料理するプロセスを見せるイノベーション
伊丹のひとり言第4章 イノベーションはバトンタッチで膨らんでいく
本当のニーズか、錯覚か
インスタントラーメンは本当のニーズに届いて、しかもバトンタッチ
バトンタッチの起きやすいスマホ、起きにくいコンタクトレンズ
バトンタッチで、ふつうのカメラからカプセル内視鏡へ
太陽光発電の背後に共同幻想?
伊丹のひとり言第5章 イノベーションの地層が面白い
ポケベルがスマホの先駆けだった
イノベーションの歴史には、地層の累積がある
抗生物質の最初の地層はペニシリン
一つの地層の中のバトンタッチ、地層の間にはブリッジ
なぜ東北新幹線は脱線せずに済んだか
伊丹のひとり言第6章 なぜ日本にはヒト型ロボットが多いか
ヒト型ロボットの背後の、文化という岩盤
自動化機械がチャンづけで可愛がられる日本
臓器移植・美容整形というイノベーションへのためらい
ワープロの背後に、日本の言語と文化
日本の食文化が食品のイノベーションにつながる
伊丹のひとり言第7章 イノベーションのためらいと抵抗も、大切にしたい
遺伝子検査の市場への出口でためらう人
利害がからんでイノベーションに抵抗する人もいる
誤解して抵抗、あるいは防衛的抵抗
抵抗勢力を味方にする
抵抗勢力がイノベーションを本物にする
伊丹のひとり言第8章 イノベーションは人を幸せにするか
イノベーションって、そんなにいいことばかり?
進捗を目指すことを認めようというスタンス
しかし、イノベーションの進化経路に枠をはめるべき場合がある
自然が自己改変してきたのも、地球の歴史
許してください、という人類の知恵
伊丹のひとり言第9章 東京オリンピックはイノベーションにつながるか
オリンピックがイノベーションにつながる、となぜ考えるか
同期と圧力、どちらがより強力か
規制緩和より規制強化がイノベーションにつながる?
市場への出口を塞いでいる規制の緩和は必要
オイルショック後の離れ業を再現したい
おもてなしの国らしい、電子情報の使い方のイノベーションを
伊丹のひとり言第10章 イノベーションを興せる人はどんな人?
私たちもイノベーションに貢献できますか?
ユーザーイノベーションに参加する
イノベーションの中心になれる人の資質は
知能指数の高さよりも、人がついてくる人
組織人型イノベーターが日本の鉄鋼業にイノベーションを興した
伊丹のひとり言第11章 イノベーションの夢を、私たちも考えよう
リアスティック・ドリーマーになろう
エネルギーから:個人単位の発電システム
環境から:ペンダント型空気清浄機
二酸化炭素を炭素源に
日本は、感性に訴えるイノベーションで
伊丹のひとり言第12章 日本企業のイノベーションは、大丈夫ですか?
一発ホームランか、ヒットの累積か
世界から人が集まる、実験の国アメリカ
得意技でアメリカの逆手をとる、成功率を上げる、重複を省く
小さなイノベーションを継続することが大切
伊丹のひとり言
伊丹 敬之(いたみ・ひろゆき)
1945年、愛知県生まれ。1967年、一橋大学卒業。1969年、一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。1972年、カーネギー・メロン大学経営大学院博士課程終了、Ph.D 取得。
1985年、一橋大学商学部教授。1994年、一橋大学商学部長。2008年、東京大学理科大学総合科学技術経営研究科教授。一橋大学名誉教授。
日経・経済学図書文化賞“Adaptive Behavor : Management Control and Information Analysis”、経営科学文献賞『経営戦略の論理』、日経・経済図書文化賞『日本企業の多角化戦略』、日本公認会計士協会中山MCS基金賞 『日本型コーポレートガバナンス』を受賞。2005年、紫綬褒章。組織学会、日本経営学会会員。
和文著書に、『経営戦略の論理』(現在、第4版)『日本企業の多角化戦略』『日本型コーポレートガバナンス』『よき経営者の姿』『イノベーションを興す』『孫氏に経営を読む』(日本経済新聞出版〈日本経済新聞社〉)、『人本主義企業』(筑摩書房)、『場のマネジメント』(NTT出版)、『場の論理とマネジメント』『経営の力学』(東洋経済新報社)、『人間の達人 本田宗一郎』(PHP研究所)など多数。
英文著書として、
“Adaaptive Behavior : Management Cotrol and Information Analysis” American Accounting Association, 1977
“Mobilizing Invisible Assets” Harvard University Press, 1987
がある。
コメント
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