歴史の中で受け継がれてきた宝物たち
毎年秋、奈良国立博物館では正倉院展が開催されています。
私も今年は、正倉院展へ足を運ぶことができました。
特別展はたった2週間ほどの開催期間ですが、毎年とても多くの方が訪れるそうです。私も今回はたまたま夕方に滑り込んだので空いてたのですが、いつもは入場規制がかかり、館内もたくさんの人だそうです。
この写真は暗くて分かりづらいのですが、奥の建物が奈良国立博物館です。この博物館も、正倉院をイメージしたデザインだそうです。一階部分がガラス張りで、高床式の建物のように見えます。
さて今回、杉本一樹『正倉院 歴史と宝物』を読むまで、正倉院についてよく知りませんでした。著者の杉本さんは、宮内庁に勤務し正倉院事務所長を勤めていらっしゃる方です。いわば関係者の方が書かれた書籍なのですが、その歴史が長い。
8世紀、東大寺の建立時に正倉院も完成しました。といいますか、正倉院とはもともと東大寺の蔵なのです。ゆうに1200年以上も保存されてきたものを、今もなお管理し保存し続ける業務とは、気の遠くなるようなスケールのお仕事です。
更に、正倉院展でも興味深いのは、収蔵品のラインナップです。いわゆる日本的なテイストのものよりも、目立つのはオリエンタルな品物の数々。シルクロードを伝って日本にもたらされた大陸の品々がズラリと並びます。
正倉院について研究するということは、シルクロードの先の文化を知ることでもあるようです。これまた、気の遠くなるスケールの話です。
それらを維持、管理、修理し保存し続けることは、大変な仕事です。さらに、それらを整理し、修復するさい、一つの物をバラしたり分けたりすると、それらも新たなパーツとなり、新たな宝物となります。
「宝物」というものは、時の流れの中でなにやら新たかな宝物を生じさせ、目録がどんどん触れてゆくそうです。イザナギが禊をするとほとばしった水滴から神々が生じるようなイメージですね。
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正倉院-歴史と宝物
- 著者:杉本一樹
- 発行所:中央公論新社
- 2008年10月30日
目次情報
- はじめに
- 第1章 正倉院とは何か?
- 第2章 宝物奉献をめぐって――献物帳の世界
- 第3章 宝物の保管と利用――「曝涼帳」の時代
- 第4章 帳外品の由来について――東大寺の資材と造東大寺司関係品
- 第5章 宝庫・宝物の一千年――平安~江戸末期
- 第6章 近現代の正倉院
- あとがき・参考文献
著者略歴
杉本 一樹(すぎもと・かずき)
1957年東京生まれ.東京大学文学部国史学科卒業.同大学院人文科学研究科中退.博士(文学).現在,宮内庁正倉院事務所長.
著書『正倉院学ノート』(共著,朝日新聞社,1999)
『皇室の名宝5 正倉院 文書と経巻』(編著,朝日新聞社,1999)
『日本古代文書の研究』(吉川弘文館,2001)
『日本の美術 第440号 正倉院の古文書』(至文堂,2003)
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