「維摩経」というお経をご存知ですか?
“ゆいまきょう”と読み、維摩(ゆいま)さんという、お釈迦さんの弟子のことが書かれたお経です。
維摩さんは出家することなく、普通の生活をしたままお釈迦さんの弟子になります。出家するとお寺などで住み込みで修行をしますが、在家(ざいけ)信者は自分の家に居たまま修行をします。現在も、多くのお宅はそれぞれどこかのお寺の檀家に入っていますから、在家信者ということですね。
みんな維摩さんにタジタジ
維摩さんが生きていた頃、出家して修行をする僧(お坊さん)たちが偉くて凄い人たち。在家信者たちは格下で低いものとされていました。しかし、維摩さんは在家でありながら、とても優秀な人物でした。出家した僧たちと話をしても、言い負かしてしまいます。
みんな維摩さんに会うと、こてんぱんにやられてしまうので、維摩さんに会いたがらなくなりました。
ある時、維摩さんが病気になり、お釈迦さんにお見舞いに来てくれるよう頼みます。お釈迦さんは自分の代わりに弟子を使わそうとするのですが、弟子たちも維摩さんに会うのを嫌がります。仕方がないので、文殊菩薩が維摩さんの元へ行きました。
実は維摩さん、病気だと行って人を見舞いに呼び、その人達に次々と教えを説いていたのです。文殊菩薩とも、問答(もんどう・質問と答えを論じる修行)をします。
維摩さんは病気だから「お見舞いに来い」と言ったのに、「お説法をする」ことが目的だったんですね。
これがまさに「嘘も方便」というヤツですか。
「嘘も方便」っていうけど、嘘は嘘じゃないの?
「嘘も方便」ということわざも、語源は仏教の言葉です。正しい仏の道を指し示すためには、時には嘘をついてでも人々を導く方法もあるのです。
ことわざでは嘘は良くないけれども、嘘をつかないといけないときもある、という意味でしょうか。丸く収めるために多少の嘘も仕方ない、というニュアンスでも使いますね。
私はこの「嘘も方便」ということわざが大嫌いでした。どんな理由があろうと嘘は嘘だし、嘘は悪いことだ!こんなことわざがあるせいで、嘘をついても構わないと思っている人がいる!そんな風に、イライラしていました。
今は少し考えが変わって「そういうこともあるのかなぁ」と思うようになりましたが、それでも「ついて良い嘘」がどのようなものであるのかは分かりません。
相手を思いやること、気使うこと
一つだけ「これはいいのかな?」と考えたのが、嘘をつくことで相手の人が幸せになったり嬉しくなって、自分の得にならない場合です。「自分はなんにも得にならない」というのがポイントじゃないかなぁと思いました。
山﨑武也さんの『「気の使い方」がうまい人』では、人とのコミュニケーションを上手に行うコツが101個紹介されています。それぞれ、具体的に「こんなときこうする!」というノウハウが詰まっています。自分もいつも気をつけているコツもあれば、まさに私が人と上手にできないこともありました。
「気を使う」とタイトルにありますが、相手の立場で考える。相手の気持ちを想像することが、人とのコミュニケーションを上手にすること。それが「気を使う」ことだ、とわかりました。
私たちはついつい「自分は、どうしたいか」「自分は、どう思うか」ばかり考えてしまいます。自分の気持ちも大切ですが、「相手は、どうされたら嬉しいか」「相手は、どう思われたいのか」考えてみることは、私はできていないと思います。
「相手を思いやる」ということは、相手の立場を考えて行動することです。でもそれは、自分の気持ちと違うこともあるかもしれません。
友達が遅刻してきたら……なんて言う?
例えば、友達と待ち合わせをしていた。だけど、電車が途中で止まってしまい友達が遅刻をしてきた。遅刻の理由は友達のせいじゃないけど、自分は待たされてイライラした。だけど、友達が「遅れてごめんね」と謝ってくれたら、怒らずに「うん、大丈夫」と言う人が多いんじゃないかなぁと思います。本当は、イライラしているのに、「大丈夫」って言うのは、これも一種の「嘘」なのかもしれません。
しかし『「気の使い方」がうまい人』で学んだ気遣いは、これよりも先を考えます。待たされた自分もイライラしましたが、電車の中で閉じ込められていた友達はもっとイライラしたでしょう。その上、友達のせいじゃないのに「ごめんね」と謝ってくれたのです。謝らなくてもいいのに、私のことを思って言ってくれたんですよね。だから、「ありがとう」と私もお礼を言うべきですよね。そして、電車に閉じ込められた友達を思うと「大変だったね」「疲れたでしょう」と、ねぎらいの言葉をかけようと思います。
“自分の気持ち”を正直に言うなら「イライラした」ですが、“相手の気持ち”に立って考えると「ありがとう、大変だったね」になりました。私の考えの通り、相手を思いやっていますが、自分の得には繋がりません。
待たされてイライラしたことも本当です。だけど、友達への「ありがとう」も「大変だったね」も本当です。
自分の気持ちに嘘をつく、というよりも、着目点を変えてしまうのです。
ここまで考えると、もしかすると「嘘も方便」ってこういう感じことなのかなぁ?と少し、気付きました。
「気の使い方」がうまい人
目次情報
- はじめに――“信用される人”が実践している「人間関係のコツ」
- 1章 「だから、この人とはウマが合う!」――心が伝わる21の会話術
- 2章 「思いがけないこと」――相手を楽しくさせる14の秘訣
- 3章 「気がきく人」はここが違う!――相手の心をつかむ25の気配り
- 4章 「嫌い」を「好き」に変える!――「その人」と親しくなるための19の心理術
- 5章 「一緒にいるだけで気分がいい」――好感を持たれる人の22の共通項
著者紹介
山﨑 武也(やまさき・たけや)
広島県生まれ。一九五九年東京大学法学部卒業。ビジネスコンサルタントとして国際関連業務に幅広く携わるかたわら、茶道など文化面でも活躍を続ける。仕事術、仕事にまつわる人間関係などのビジネス書での著作が多い。また、卓越した人間観察力から生まれた『心を打つちょっとした気の使い方93』はベストセラーになる。その他の著書に『お金の使い方でわかる大人の「品格」』『60歳からの人生の愉しみ方』(三笠書房《知的生き方文庫》)、『ちょっとしたことでかわいがられる人、敬遠される人』(三笠書房《王様文庫》)、『持たない贅沢』『「流されない」生き方』『ああなたの人生に「孤独」を持ちなさい』(以上、三笠書房)、『[図解]なぜあの人には「味方が多い」んか』(PHP研究所)、『弁護士に依頼する前に読む本』(日本経済新聞社)などがある。
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