『失敗だらけの人類史』|原罪…思い込み、ウッカリの歴史

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『失敗だらけの人類史』挿絵イラスト

こんにちは。ケアレスミスが多い あさよるです。あさよるは神経質で心配性なんですが、それは心配をして神経をすり減らすだけの、信じられないような失敗をするから油断ならないのです(苦笑)。しかしこれは、人間は過ちを犯す生き物であって、あさよるが悪いわけではありません。仕様です(と思いたい)。

ということで、人類最初の人・アダムもまた、イブに誘惑され神との約束を破ります。我々は最初の人間から、過ちばかり犯しているのです……『失敗だらけの人類史』は、そんな哀愁すら漂う人類の失敗の歴史をまとめたものです。イブはサタンにそそのかされ知恵の実を口にし、そしてアダムにも分け与えました。その子孫である人類も同様に失敗続きの人類史。英雄たちのたった一つの失敗が歴史を大きく動かすのです。

タイトルとこの装丁、そしてコンセプトを知ると手に取らずにはいられないような心惹かれる『失敗だらけの人類史』は、数貸すの大失敗に、しみじみと感じ入るばかり。

歴史を動かした大失敗

本書『失敗だらけの人類史』は、英雄たちが下した「失敗」によって歴史が変わった出来事を紹介したものです。本書はこんな序章から始まります。

人類の歴史は「失敗の歴史」ともいえる。しかもその失敗の多くは、優秀で善意に満ちた人々が、肝心なときに大事な判断を誤ったために引き起こされている。少なからぬ人々が二者択一の選択問題を間違えてしまったのだが、これらの判断の多くは、そのときには一番良い考えに思えたものばかりである。
一方、とてつもなく愚かな判断が下されたことがあるのも事実であり、本書には、人類が犯した愚の骨頂ともいうべき失敗の数々が取り上げられている。それらは罪のないうっかりミスなどではすまされない。たくさんの人命や人々の暮らしを損なったり、国や王朝を滅ぼすような高い代償を払う結果をもたらした、実に愚かなヘマである。後世に負の影響を及ぼした致命的な誤算である。

(中略)

人類の愚かな過ちを追体験することを厭わない読者諸賢におかれては、サンタヤーナ歴史再現協会(Santayana historical Reenactment Society)に興味を持たれるかもしれない。この教会の会員たちは歴史に名高い愚行の数々を実際に再現してみせる活動にいそしんでいるが、それは、協会がその名を関する人物、ジョージ・サンタヤーナの名言に注目して欲しいからだ。サンタヤーナ曰く――「過去を学ばないものは、必ずや同じ過ちを繰り返す」

p.6-7

本書の歴史的失敗は、その歴史的人物たちがその判断を怠った瞬間、失敗に気づいていないどころかそれが最適解だと信じていたり、あるいはどうしようもないウッカリミスで起こります。舵取りを誤りエジプト最後のファラオになってしまったクレオパトラ。氷に閉ざされた土地を「グリーンランド」と名づけ移民を募ったバイキング。侵略者を神と間違え、歓迎して招き入れてしまい、文明を滅亡させてしまった皇帝。モスクワ撤退を決めていたのに、気が変わって敗戦してしまったナポレオン。ラスプーチンを狂信してしまったレクサンドラ皇后はロマノフ朝を終焉させてしまいます。チャーチルが引いた国境線は今日の中東問題の火種です。

どの失敗も「その時はそれが良い判断だと信じていた」あるいは「うっかり」のいわゆる「魔が差した」ような過ちもあります。これらの失敗だらけの人類史の、種をまいたのは、そう、アダムとイブの過ち。

アダムとイブが禁断の果実を口にする

すべてはここから始まった。ということで、第一章は「アダムとイブ、禁断の木の実を口にする」から始まります。彼らの過ちは、その後の人類が犯す過ちをすでにはらんでいます。

人類はなぜ失敗ばかり犯すのか? その動機は本書の中で追々明らかになるが、その多くが、この2人の中にすでに現れている。すなわち、嫉妬、暴食、色欲、知識欲、そして、言いつけに背いても何とかなるだろうという強い思い込みである。

p.8

ちなみに、聖書のアダムとイブが禁断の実を口にするエピソードは、女性憎悪的であると本書では指摘しています。だって、人類の堕落をもたらしたのはイブであるとするからです。神は最初の人・アダムを作ります。そしてアダムの体からイブを作りました。二人は夫婦になりますが、イブが神の言いつけに背き、そしてアダムを誘惑するのです。

イブをそそのかした犯人はサタン・悪魔です。キリスト教もイスラム教もユダヤ教も「サタン」という絶対的悪を生み出したことによって、その後に起こるできごとは「すべてサタンのせい」にできるようになりました。

神に背き、楽園であるエデンの園から追い出された二人の家庭は円満ではありませんでした。息子のカインが、弟のアベルを殺害し、人類初の殺人が起こってしまうのです。

本書『失敗だらけの人類史』は、アダムとイブによる「原罪」が、その後そのように人類に降りかかるのかを紹介するものなのです。

『失敗だらけの人類史』挿絵イラスト

世界史つまみぐい

本書『失敗だらけの人類史』は、世界史が苦手な人でも大丈夫。一章一章は独立していて「失敗を犯した人物」「失敗の結果どうなったか」「それはどのような失敗だったか」と三要素を表にまとめられており、妙に分かりやすい構成になっております。

『失敗だらけの人類史 英雄たちの残念な決断』ビジュアルイメージ画像

失敗だらけの人類史 英雄たちの残念な決断 (ビジュアル讀本) | ステファン・ウェイア, ナショナル ジオグラフィック, 定木大介, 吉田旬子 |本 | 通販 | Amazon

また、ビジュアル資料もたくさん収録されており、パラパラと見ているだけで楽しい内容です。

他人の失敗談ですから「アラお気の毒」と思いつつも「あ~こういうことあるなあ~」と妙に歴史的人物に共感しちゃったり、「これはやっちゃいそう」と反省することも。

結末を知っているから、わかること

ちなみに あさよるは、メキシコにあったメシカ族(アステカ帝国の後裔)の皇帝が、南アメリカへ侵略しに来たスペイン人を「神」だと勘違いして歓迎してしまうエピソードは、「あ~、これは確認不足なんだけど、勘違いするのもわかるな~」としみじみと。トルテカ地方では「ケツァルコアトル」という神がいて、いつの日か地上に君臨するときは「口ヒゲと白い肌」で現れると予言されていたのでした。そして、口ヒゲと白い肌のスペイン人たちがやってきた。これはもう、この予言がなされた時点で起こるべくして起こった失敗に思えます。

また、クレオパトラの失敗は、歴史の結末を知ってる私たちだから冷静に見れますが、渦中にいた彼らは、なにがどう転ぶかわからないギリギリの外交をしていたのでしょう。結果的に、彼女は恋に生き、二つの王朝を終わらせました。

一番最後の章は、2004年に起こったスマトラ沖地震の津波被害について。インド洋では100年くらいの周期で地震による津波被害があることを知っていながら、大きな準備をしていなかった各国の政府を批判します。しかも皮肉なことに、なんの対策もない地域では潮目や動物たちの異常に気づき非難した人が多かった一方で、津浪対策が行われていた地域ほど被害が大きかったのです。つまり、不十分な対策によって、逃げられるはずだった人々が災害に巻き込まれたのです。ウィーンにある包括的核実験禁止条約の事務局では、インド洋で地震が起こったを察知していましたが、クリスマス休暇中で誰もいませんでした。米軍基地は地震の情報を持っていましたが、誰に連絡すればよいのかわかりませんでした。

これらは、歴史の結果を我々は知っているから、あまりにもお粗末な失敗に眉をひそめてしまいます。しかし、その渦中にいた人々は、事態を飲み込めないまま行動していたでしょう。失敗を肯定しているのではなく、今現在の我々も「失敗と気づかずにやっている行動があるのでは?」と翻って考えるのがよさそうです。未来の人から見れば、愚かな失敗を今まさに犯しているのかも。

次に読みたいのは、コレ↓

本書『失敗だらけの人類史』と一緒に読みたくて気になっているのがこれ↓。

『世界をまどわせた地図 伝説と誤解が生んだ冒険の物語』

読書メーターでフォローしてる方が読んでらして、ずっと気になっている本です。『失敗だらけの人類史』と併せて読みたいとチェックしておりました♪ 期待!

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失敗だらけの人類史 英雄たちの残念な決断

失敗だらけの人類史

失敗だらけの人類史

  • 作者:ステファン・ウェイア/定木大介
  • 出版社:日経ナショナルジオグラフィック社
  • 発売日: 2018年01月17日

目次情報

序章
アダムとイブ、禁断の木の実を口にする
パリスがメネラオスの美人妻をさらう
ハンニバル、軍勢を率いてアルプスを越える
クレオパトラ、アントニウスと手を結ぶ
皇帝ネロとローマの大火
バイキングの探検家、グリーンランドに入植
教皇シルウェステル2世と世界の終わり
アレクサンデル3世とプレスタ―・ジョンの探索
ポジェブラト、欧州結合のアイデアを各国に売り込む
モンテスマ2世、スペイン人侵略者を歓迎する
ヨハン・デ・ウィット、マンハッタン島を手放す
ノース卿、ボストン茶会事件で米国を失う
ナポレオン、モスクワを前に翻意する
戦争省、ナイチンゲールの邪魔をする
インド陸軍、牛脂をめぐって反乱
オースティン、オーストラリアにウサギを放つ
カスター将軍とリトルビッグホーンの惨劇
ベルギー王ナナポルドとアフリカの分割
ニコライとアレクサンドラ、怪僧ラスプーチンを狂信
タイタニック号に積まれたイズメイ社長の救命ボート
ガヴリロ・プリンツィプ、サンドイッチを買う
ウィンストン・チャーチルとガリポリでの完敗
英国司令官ヘイグ、ソンム川で作戦を変更せず
フランス軍、マジノ要塞線を過信する
チャーチルの描いた国境線、今日まで中東紛争の火種に
20世紀最悪の暴君 スターリンと大粛清
日本軍の奇襲攻撃とシンガポールの陥落
原因は干ばつにあらず ベンガルの米飢饉
不毛の土地に種をまく 悲惨な落花生計画
人間をモルモットにしたマラリンガでの核実験
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起きなかった2000年問題、必要なかった備え
ムガベ大統領、ジンバブエの大地を接収
ずる賢いエンロン社、数字をいじる
津波観測センサ、インド洋に設置されず
参考図書など
索引

ステファン・ウェイア[Stepen Weir]

米国ニューヨーク在住のノンフィクション作家。出版人としての経歴が豊かで、オーストラリアのノーベル文学賞受賞者パトリック・ホワイトや、英国の軍事歴史家ジョン・キーガンらの出版をサポートしている。富豪のジョージ・ソロスとも親交がある。

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