『論理的思考力を鍛える33の思考実験』|割り切れない話を理解できる?

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『論理的思考力を鍛える33の思考実験』挿絵イラスト

こんにちは。あさよるです。ネットで時々「思考実験」という言葉を目にするんですが、イマイチ意味がわからないまま今に至りました。いわゆる「ネット論壇」とか「ツイ民」とかが使っているイメージ……というか「ネット論壇」も「ツイ民」もよくわかりませんがw

ということで、「思考実験」に関する本をいくつか読んでみようと見繕った、最初の本がこちら『論理的思考を鍛える33の思考実験』でした。まず、本書はあさよるの求めているものとは(たぶん)違う、脳トレ的な、答えが複数ある問題や、パズルゲームのような内容でした。結果、とても楽しい本だったのでラッキーです。

『論理的思考を鍛える33の思考実験』では、サンデル先生の白熱教室でも話題になった「暴走トロッコと作業員」の命題や、パラドクス、不思議な確率の話など、興味惹かれる話題が33収められています。とりあえず、頭からっぽにして、読んでみましょう。

思考実験とは

まず、「思考実験」とはなんでしょうか。

 思考実験とは、実験と聞いて最初に思い浮かぶ理科の実験のように、道具やそれを扱う場所を必要とする実験ではありません。ある特定の条件の下で考えを深め、頭の中で推論を重ねながら自分なりの結論を導き出していく、思考による実験です。

(中略)

実験室はあなたの頭の中、実験道具はあなたの倫理観や今まで積み上げてきた知識や倫理的思考力、集中力や想像力といったところでしょうか。

p.2

何もなくても、知識や倫理、思考力で実験ができるというのは、言うのは簡単ですが、難しそうな話ですね。また、この思考実験は、ビジネスの場でも役立ちます。推論や多角的に物事を見つめ、結論を出すためには、論理的思考が試されます。

本書の著者・北村良子さんはパズル作家として、日々思考実験を重ねておられる方です。本書も、思考実験をしながら、脳を鍛えるゲーム「脳トレ」的に楽しみましょう。

思考実験にチャレンジ

本書で取り上げられる思考実験は全部で33。これら大雑把に4つに分けられています。一つ目は、答えのない倫理に関する問い。二つ目は矛盾やジレンマの話。三つ目は、感覚的には信じがたい確率の話。四つ目は不条理なお話。

ページをめくりながら一緒に考えられるよう、思考のポイントや考え方もまとめられています。また、賛成/反対意見とその理由も、公平に語られています。

答えのない問題に耐えられるか!?

小学校の問題のように、予め答えが用意されている問題ばかりではありません。そもそも答えなんて存在しない問いもあります。答えがない、だけど考えなけれなならない、このストレスにあなたは耐えられるでしょうか。

まずは、「暴走トロッコと作業員」の思考実験から始まります。これはサンデル教授の「ハーバード白熱教室」で有名になった思考実験です。暴走して止まらないトロッコの行き先に、5人の作業員がいて、このままでは5人全員が死んでしまいます。あなたは手元のハンドルでレールを切り替えることができるのですが、切り替えたレールの先には1人の作業員がいます。このまま放置すれば5人の作業員が、あなたが線路を切り替えれば5人は助かり1人の作業員が死にます。さて、あなたはどうしますか?

多くの人は、5人を助けるなら1人を犠牲にするのは仕方がないと答えるそうです。一方で、5人はトロッコに轢かれる運命だから自分は関与しないと答える人もいます。どちらが正しいわけでもなく、答えもない問いです。

同じような問いでも、条件が変わると答えが変わります。「暴走トロッコと作業員」の別バージョン。あなたは線路の上にかかる歩道橋の上に居ます。そこへ、暴走トロッコが走ってくるのが見えました。レールの先には5人の作業員がおり、このままでは5人全員が死んでしまいます。ふと、横を見ると、でっぷりと太り、重い荷物を背負った男性がいます。この男性を歩道橋の上から突き落とせば、トロッコが止まり、5人の作業員は助かります。さて、あなたはどうする。

これも、先ほどの「5人の命を助けるために1人の命を失っても仕方がない」と同じ話なのですが、多くの人は太った男性を突き落とさないと答えます。同じ状況下ですが、少し状況が変わっただけで答えが変わるのです。

このような「正しい答えはない」問いが8つ収録されています。

矛盾……

パラドックスのお話。有名なのは「アキレスと亀」のパラドックス。俊足のアキレスと、鈍足の亀が徒競走をします。アキレスは亀より足が速いのでハンディキャップとして亀より後にスタートします。

 スタート時、亀がいた場所をA地点とすると、アキレスがA地点にたどり着いたとき、亀は少し前のB地点にいます。次に、アキレスがB地点にたどり着いたとき、亀はさらに少しだけ前のC地点にいることは確実です。次にアキレスがC地点にたどり着いたときはどうでしょう。亀は少し前のD地点にいます。その次にアキレスがD地点にたどり着いたときはどうでしょうか。もちろん亀は少し前のE地点にいます。
これは永遠に続きます。つまり、アキレスは決して亀に追いつくことはできません。アキレスはいくら頑張っても、少し前に亀がいた地点に追いつくだけなのですから。

p.77

さて、ではどうしてアキレスは亀に追いつけないのでしょうか。まずは自分で考えてみてくださいね。

本書では以下のような説明がなされています。

 アキレスが亀に追いつけないのは、アキレスが亀に追いつくまでのアキレスと亀の関係を延々と細かく説明しているからです。

(中略)

つまり、アキレスが亀に追いつく瞬間が訪れる以前のシーンを細かく細かく考えているだけに過ぎないのです。
確かに、アキレスが亀を追いかけている状態であれば、どのシーンでもアキレスより亀が前にいますよね。
いくら俊足で知られるアキレスでも、亀に追いつく以前のシーンを延々と分解して検証されたのではたまったものではありません。追いつく以前に追いついているわけでがありませんから。

p.80-81

……納得できましたか? あさよるはイマイチ釈然としないままなんですがw 詳しい答えは他の本を当たってみてみましょう……。

釈然としない答え

3つ目は、確率のお話。数学的には正解なんだけど、感覚的には納得いかない!という話。

ルーレットで赤か黒かを当てるギャンブルで、7回連続赤が出ました。ギャンブラーは、もう7回連続で赤だから、次は黒だろうと黒に賭けましたが、結果は赤。8回連続で赤だから、次こそは黒だろうと黒に賭けますが、またもや赤が出ました。9回連続で赤だなんて、これは奇跡だ。だけど、こんな奇跡が続くわけない。だから、次は黒の方が出る確率が高いのではないかと考えました。さて、10回目で黒が出る確率は、赤よりも高い?

図に書くとこんな感じ

 1回目
 2回目
 3回目
 4回目
 5回目
 6回目
 7回目
 8回目
 9回目
○ 10回目は?

答えはもちろん1/2です。しかし、10回連続で赤が出るというのは、確かに奇跡のように感じます。10回連続赤の確率は1/1024だそうです。しかししかし、年がら年中ギャンブルが行われるカジノでは、1/1024なんて珍しくもないでしょう。わたしたちは、感覚的な確率と、実際の確立が違ってしまうことが多々あるのです。

ちなみに、ランダムに赤か黒が出るとき、どちらが珍しいと思いますか?

1回目
2回目
3回目
4回目
5回目
6回目
7回目
8回目
9回目
10回目

左の方がランダムな気がしますよね。だけど、どちらも確率は1/1024で同じです。なのに、左は普通の現象に見え、右は「奇跡」のように感じてしまうのです。

トランプゲームや、クジでも同じような心理状態が働きます。なんとなく、「こっちの方がすごそう」「こっちがよさそう」とわたちたちは思い込んでしまうのです。こういうところで負けちゃうのね~

不条理

最後は不条理な話。「来週抜き打ちテストがあります」と先生が宣言しました。そこであなたは考えます。

「もし、金曜日に抜き打ちテストがあった場合、木曜までにテストがなければ自動的にテストは金曜と決定する。これだと〈抜き打ち〉にならないから、金曜にはテストがないはずだ」

「すると、水曜までにテストがなかった場合、自動的にテストは木曜ということになる。これでは〈抜き打ち〉にはなならない。ということは、木曜にはテストはないはずだ」

「ということは、テストは水曜までということになるが、火曜にテストがなかった場合、自動的にテストは水曜と決まってしまう。これでは〈抜き打ち〉にならない。よって水曜にテストはないだろう」

「いやまてよ。テストが水曜にないということは、月曜か火曜にテストがあるわけだけど、月曜にテストがなかった場合、自動的に火曜日がテストになる。これじゃあ〈抜き打ち〉にならないから、火曜にはテストはないだろう」

「したがって、テストがあるなら月曜しかないわけだけど、これだと〈抜き打ち〉とは言えない。だから、月曜にテストはない」

「……ということは、来週抜き打ちテストはない!」

そう結論付けたあなたは、もちろんテスト勉強などせず登校しましたが、もちろん先生の言う通りある日抜き打ちテストが行われ、結果惨敗。なぜ!?

面白い話なので、長文になってしまいましたw 実際に〈抜き打ちテスト〉が行われたとき、あなたはとても驚くでしょう。だって「抜き打ちテストはない」はずなのに! ということで、結果的に先生の言う通り〈抜き打ち〉でテストがなされたと言えますw

パズルを解くように

『論理的思考力を鍛える33の思考実験』挿絵イラスト

本書は〈思考実験〉と難しそうな言葉が使われていますが、実際に読んでみると、まるでパズルを解くかのような感じです。よい回答を自分で考えられたり、当たったときは気持ちよいですし。

軽く脳トレしつつ、古代からあるパラドクスや、有名な思考実験の問題に触れながら、楽しく読み進められるので、非常にとっつきやすい本でした。あさよるも読みはじめる前は「難しかったらどうしよう」と身構えていましたが、面白い本でした。

倫理の話はよく話題に上るものですが、あさよるが興味惹かれたのは確率の話。確かに、中学高校で習った問題のハズですが、ちっとも思い出せない! それに、日常生活でも役立ちそうなのも確率の話です。こういう風にわたしたちは勘違いをして、ダマされるor賭けに負けるのか~ と、他人事ではありませんw

ブログで紹介した例は少しですが、本書『論理的思考を鍛える33の思考実験』は、33もの脳トレ的問題が詰まっています。サクっと、気分転換にどうぞ!

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論理的思考力を鍛える33の思考実験

論理的思考力を鍛える33の思考実験

論理的思考力を鍛える33の思考実験

  • 作者:北村 良子
  • 出版社:彩図社
  • 発売日: 2017-04-27

目次情報

はじめに

第1章 倫理観を揺さぶる思考実験

【思考実験№.01】暴走トロッコと作業員

――暴走するトロッコの先にいる5人を見殺しにするか、線路を切り替えてその先にいる1人を犠牲にするか

【思考実験№.02】暴走トロッコと作業員と太った男

――暴走するトロッコの先にいる5人を見殺しにするか、1人を線路に突き落としトロッコに当てて止めるか

【思考実験№.03】暴走するトロッコとループする線路

――暴走するトロッコの先にいる5人を見殺しにするか、ループする線路に切り替え、そこにいる1人を壁にするために犠牲にするか

【思考実験№.04】臓器クジ

――健康診断に来た男を安楽死させ、臓器移植を待つ5人にその臓器を提供することは、ありかなしか

【思考実験№.05】完全平等な臓器クジ

――臓器移植のために臓器提供者を全ての人の中からくじ引きで決めることは、ありかなしか

【思考実験№.06】6人の患者と薬

――特効薬が1つしかない状況で、重篤な患者1人と中程度の症状の患者が5人いたら、どちらに薬を使うか

【思考実験№.07】効かない薬

――薬が効きにくく5人分の薬を必要とする患者と、通常通りの分量で治る5人がいるとき、薬が5人分しかないならどちらに使うか

【思考実験№.08】村のおたずねもの

――暴徒化した村人5人と、濡れ衣をかけられたよそ者、どちらを救うか

第2章 矛盾が絡みつくパラドックス

【思考実験№.09】テセウスの船

――長く修理して使い続けられてきたテセウスの船と、修理の際に剥がされた木片で復元したテセウスの船は、どちらが本物か

【思考実験№.10】アキレスと亀

――俊足のアキレスと鈍足の亀が競争することになったが、いつまでたってもアキレスは亀に追いつけない。これはなぜか

【思考実験№.11】5憶念ボタン

――ボタンを押すと異世界で5億年過ごすことになるが、終われば辛い記憶がなくなり元の世界に戻れるアルバイト。100万円で引き受けるべきか否か

【思考実験№.12】タイムマシン物語

――自分が生まれる前に死んでしまった母親をタイムマシンで救いに行くことは可能か

【思考実験№.13】タイムマシン物語・2

――20年前に死んだ妹を、タイムマシンで救いに行くことは可能か

【思考実験№.14】タイムマシン物語・3

――タイムマシンで過去に行き、祖父母の出会いを妨害することで、父親の誕生を阻害することは可能か

第3章 数字と現実の不一致を味わう思考実験

【思考実験№.15】モンティ・ホール問題

――3つのドアがあり、正解のドアを選べば景品がもらえる。不正解のドアを1聞いてから選択するドアを変えると、正解率は上がるか

【思考実験№.16】不平等なデザインコンテスト

――確率的に不利なコンテストで、自分以外の結果を聞いた場合、勝率は上がるのか

【思考実験№.17】ギャンブラーの葛藤

――ルーレットで連続9回赤が出ている場合、次に黒が出る確率は赤が出る確率よりも高いか

【思考実験№.18】トランプの奇跡

――トランプをランダムに4枚引いて全ての絵柄がAである確率と、全て違う絵柄である確率はどちらが高いか

【思考実験№.19】カードの表と裏

――「偶数が書かれたカードの裏はハート」という条件がある場合、6枚のカードのうち、どのカードをめくればその条件が正しいかわかるか

【思考実験№.20】見抜く質問

――塾で働ている人の条件が適切かどうか、誰に何を聞けば見抜くことができるか

【思考実験№.21】注文伝票の裏側

――「コーヒーを頼まなかった女性は全員スイーツを頼んだ」と店員が言ったとき、どの注文伝票の裏を見れば、店員が言っていることが正しいかわかるか

【思考実験№.22】2つの封筒

――金額が書かれた紙入りの封筒が2つあり、片方には倍か半分の金額が書かれている。一度選択した封筒を取り換えてもいいと言われたら、交換するほうが得か否か

【思考実験№.23】2つの封筒・2

――片方の封筒には2万円が入っており、もう片方の封筒にはその倍か半額が入っている。この封筒はもう1つの封筒と取り換えた方が得か否か

【思考実験№.24】エレベーターの男女

――フロアに訪れる客が男女半々だと分かっているとき、2人乗りのエレベーターからまず男性が下りてきたら、次に降りる人は女性と男性、どちらの可能性が高いか

【思考実験№.25】ありえない計算式

――「1=0.9999999……」はあり得るか

【思考実験№.26】あり得ない計算式・2

――「2=1」はあり得るか

第4章 不条理な世の中を生き抜くための思考実験

【思考実験№.27】抜き打ちテスト

――「来週抜き打ちテストを行う」と宣言してしまったら、抜き打ちテストを行うことができない?

【思考実験№.28】生きるための答え

――「お前が言った死に方で死なせてやる」と言われたときに、生き残るためにはなんと答えればいいのか

【思考実験№.29】生きるための答え・2

――「私はこれから行うことを当てたら殺さないでやろう」と言われたら、生き残るためにはなんと答えればいいのか

【思考実験№.30】共犯者の自白

――容疑者であるA氏とB氏。ともに黙秘すれば懲役2年。片方が自白すれば自白した方は釈放、片方は懲役10年。ともに自白すればお互い懲役6年、それを選ぶ。

【思考実験№.31】マリーの部屋

――生まれたときから世界が白黒に見えるゴーグルをつけている色の研究者マリーが、ゴーグルを外したときに知ることは何か

【思考実験№.32】バイオリニストとボランティア

――他人であるバイオリニストを助けるために、9か月間、自分が管につながれ拘束されることを了承する必要はあるのか

【思考実験№.33】コンピュータが支配する世界

――コンピュータが職業適性や犯罪者を判断してくれる世界は幸せか

おわりに

北村 良子(きたむら・りょうこ)

1978年生まれ。有限会社イーソフィア代表。パズル作家としてWEBで展開するイベントや、企業のキャンペーン、書籍や雑誌等に向けたパズルを作成している。著書は『パズル作家が明かす脳にいいパズルはどっち?』(コスモ21)、『おうちで楽しく!でんしゃの学習ブック7さいまでのひらがな・カタカナ・漢字の練習』(メイツ出版)他。
運営サイトはIQ脳.net(http://iqno.net/)、老年若脳(http://magald.com/)等。

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